ヒットメニュー列伝近代メニューに名を残す逸品(51)「とんかつ鈴新」かけかつ丼
◆とんかつ鈴新 「かけ かつ丼」940円
よく煮込まれたカツ丼も、甘いカツ丼も、分厚いカツのかみ応えを楽しむようなカツ丼も、すべてを一度に楽しむことができる「盛りだくさんで欲張り」なカツ丼。揚げたてのカツと煮込まれたカツのおいしさを両方一度に味わうことができる究極のカツ丼が東京・新宿区四谷荒木町の「鈴新」にある。
「かけ かつ丼」という商品名だ。揚げたて豚カツをご飯にのせ、そこにだしをタップリ含んで煮上げられた卵とネギがフワッとかかる。この「煮ずに作る」カツ丼がなんとも素晴らしい。
一口目は、まさに豚カツ。前歯にパン粉がサクッと当たり、乾いた食感がとても軽やか。ラードの香りも濃厚で、豚肉の味そのものを味わうことができて楽しい。
ところが、そのうち徐々にだしを含んでカツがシットリしてくるんですね。油の香りがだしに紛れて、いつも食べているカツ丼のような食感になる。それでも揚がったパン粉の風味は消えぬ。ジリジリとした熱々感も格別で、ご飯がズンズン進んで楽しい丼になる。
カツ丼という、どこにでもある、もうこれ以上進化させることが難しいだろうというような料理を、ちょっとした発想の転換で、新しい料理にしたというのが良いのでありましょう。ここに来るお客さまの多くが、カツ丼を食べて帰る。
実はここ、この名物カツ丼だけでなく、普通のカツ丼もある。「煮 かつ丼」という名前であって、それと「かけ かつ丼」を食べ比べるグループ客がいたりする。しかも、もう一つ、大根おろしで食べる「そうすかつ重」というのまであり、実はカツ丼だけで3種類ある。
「選べる楽しさが多分、ここの最大の付加価値なんだろうな」と思ったりします。
◆「とんかつ鈴新」(東京都新宿区荒木町10 十番館ビル1F、電話03・3341・0768)
((株)オージーエムコンサルティング代表取締役社長・榊真一郎)