宅配サービスの注目株(21)もうやんカレー「もうやんカレー大忍具」
現在、東京都内で3店舗展開中のカレー専門店「もうやんカレー」。玉ネギ、ニンジン、セロリ、リンゴ、バナナ、トマト、ニンニクなどの野菜や果物を約2週間かけてじっくりと煮込み、寝かせたカレーソース、そして日本の気候に合わせてブレンドした23~26種類のスパイスを使って丁寧に作られたこだわりのカレーは、年齢性別を問わず幅広い客層から支持されており、宅配サービスを利用するファンも多い。
「もうやんカレー」の宅配サービスは現在、新宿の店舗で半径約2km圏内を対象エリアとして、3輪バイク3台、軽自動車1台で行われている。
1号店がオープンしたのは今から13年前の1996年のことで、その3年後にランチタイム限定で宅配サービスを開始した。
当時はカレー弁当2種類(ビーフ、チキン)に絞り、スタッフ1人だけで多いときには約100食分の売上げもあったという。だが、ほとんどがオフィスへの配達であり、高層ビルならではのランチ時のエレベーターの混雑により、予定の時間に届けることができないなどの問題があって、半年ほどでサービスを休止する。
その後、以前のチラシを見たお客からの注文が入るなど宅配を希望する声が増えたため、専任のスタッフを置き、再開した。
販売促進のために近隣のオフィスビルやマンションへのポスティングも積極的に行ったが、あまり効果はなかったと、(有)もうやんカレー代表取締役・辻智太郎氏。
オフィスビルでは企業の受付や総務にチラシを配布することができても、そこから先、実際に宅配を利用する人たちのいる部署まで届かない場合が多い。また、マンションの集合ポストでは、ほとんどの住民がポストから取り出したチラシをそのまま廃棄する光景を目の当たりにしたという。
そこで、通勤時間帯にチラシを配布したり、店舗でもポスターを掲示したりして、徐々に注文も増加。店で食事をして、カレーの味を知ったお客が増えたことも注文増につながったようだ。
現在は2000円以上の注文から宅配を行っている。ランチはカレー弁当4種類(ビーフ、チキン、エビ、キノコ=700円)だけで、1日平均約70食分の注文がある。
また、ディナータイムは、店舗と同じメニューを扱っており、客単価は4000~5000円。1日の注文件数は20件程度という。だが、メニューアイテムが多く、店舗での営業をしながらの電話応対は難しいため、夜間だけ電話代行の業者を使っている。
「夜はメニュー内容に関する問い合わせも多いため、オペレーターには、ある程度の受け答えができるようにしてもらっている。オペレーターでは対応しきれない場合は、そのまま店の電話につながるので、店舗スタッフが直接お客さまに説明することもでき、『思っていたものと違う』といったクレームは、ほとんどない」(辻氏)
条件や注文状態によっては注文金額3000円からエリア外への配達の相談にも応じているが、「時間がかかってもいいので」というコアなファンも少なくないようだ。
この春には渋谷店もオープン予定だが、宅配サービスの導入は地域での認知度が高まってから検討したいとしている。
●「もうやんカレー大忍具」
経営=(有)もうやんカレー/所在地=東京都新宿区西新宿8-9-2 TKビル1階/その他の店舗=「もうやんカレー利瓶具」(新宿区西新宿)、「もうやんカレー池」(豊島区池袋)