クローズアップ現在:米飯市場に新風巻き起こるか 「ビリヤニ」ブームの兆し

2025.08.04 558号 07面
JR東京駅八重洲地下街(「ヤエチカ」)のカレーゾーン「TOKYO CURRY QUARTET」で人気を呼んでいる「カレー&ビリヤニニルヴァーナTokyo」の「骨付きラム肉のローガンジョシュビリヤニ」(2,900円・税込み)

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東京・若林「きいろとしろ」は、ビリヤニとスペシャルティコーヒーを専門にテイクアウト販売。写真は「チキンビリヤニ」(1,500円・税込み)

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9月に発表予定の「ミシュランガイド東京2026」に先立ち、ミシュランが公開した東京のおすすめ14軒にもビリヤニ店(インド料理店)が。東京・神田「ビリヤニ大澤」は、マトンかチキンを基本とするビリヤニ1種のみでメニュー展開している

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食べログ百名店「INDU」プロデュースのモダンインド料理&スリランカ料理「GINGER -SPICE GARDEN-」(川崎駅前「ラ チッタデッラ」2階)で人気の「ムンバイチキンビリヤニ」(1,980円・税込み)

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 都内を中心に専門店が増えている「ビリヤニ」。インドの炊き込みご飯とも称される米飯料理で、インド全域で食べられている。インドではイスラム教の結婚式にも出される由緒ある料理の一つだ。パエリヤ、松茸ご飯とともに「世界三大米飯料理」の一つともいわれている。以前は日本では出す店が少なかったが、近年はメニューに取り入れるインド料理店も多くなった。国内のコメ不足が悩ましい中、新たな米飯料理としてビリヤニは新ジャンルを築くのだろうか。

 ●世界三大米飯料理ともいわれている

 まずは、パエリヤやチャーハンとの違いを見てみよう。ビリヤニは、生米から作るパエリヤと違い、コメを半加熱した後に数種類のスパイスや肉類や海老、野菜など好みの食材を合わせて鍋で加熱をする。肉の種類は決まっていないが、イスラム教の教えにのっとり豚肉は避ける。コメは、インドの高級米「バスマティ」を使用するのが基本となっており、バスマティライスは長細く水分量が少なくあっさりした味わいで、癖がなく食べやすい。

 ビリヤニはチャーハンのように油で炒めるのではなく、鍋に蓋をして蒸らして作る。そのためか、チャーハンには感じにくい日本の「炊いたご飯の香り」と似た香りがほのかに漂う。パラパラした食感はあるのだが、一方ではふわっとした日本のご飯のような軟らかみも感じられ、その点が中国料理のチャーハンとの大きな違いであり、「炊き込みご飯」に例えられるのも納得する。米飯の蒸し料理という調理法の親しみやすさがありつつも、一方では今までにない新しい味わいがあるという点もビリヤニの個性の一つといえそうだ。

 また、一食で味わいに変化がある点もビリヤニの特徴といえるだろう。白ご飯が残っている部分、肉などのうまみが強くご飯に染みている部分、スパイスの一つ一つなど、一口ごとに風味の変化が楽しめる。

 グレイビーやライタといううまみ、酸味を加えるソース類や、ヨーグルトやナッツ類、卵など食感が変わるトッピングもあるので飽きずに食べ進めることができる。このように仕上げをカスタマイズできる点も、今の消費者に受けるポイントの一つだろう。

 ●料理として力量がある「米飯」料理

 既に2024年9月には大手コンビニのセブンイレブンでも販売しており、ビリヤニは若い世代にも知られる存在になりつつあったが、今年になってブームに拍車がかかってきているようだ。都内を中心に続々と専門店が開店している。

 パエリヤやチャーハン、釜めしなど「米飯料理」は単体だけで行列を作ることができる“引き”のある料理だ。日本人は、別途のおかずをつけなくても米飯料理だけで満腹にする食べ方に慣れている。それゆえビリヤニも専門店が成立しやすい。

 ●新たな米飯料理としての可能性

 コメ不足問題があり、当たり前のように食べていたご飯が貴重となり、おにぎりブームを経て、改めてご飯(コメ)という食材が注目されている。また、スパイスカレーが数年前に人気になるなど、昨今はようやく日本人も“スパイス”に対して馴染んできている。

 ビリヤニは異国の情緒を感じる米飯の側面とともに、日本のご飯料理のような親しみやすさも感じられ、両者の「いいとこどり」な米飯料理といえる。そして合わせる食材やソースなどにより、バリエーションを広げることができる汎用性のある料理だ。使われるのが日本のコメ品種ではないので、その点がどの程度消費者に受け入れられていくか。今後の展開に期待がもてる料理の一つである。

 (食の総合コンサルタント トータルフード代表取締役 メニュー開発・大学兼任講師 小倉朋子)

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