関西版:青果問屋が手掛けるカフェ「ARROW TREE」 主役は果物

2010.02.01 368号 12面
甘王タルトとフレーバーティーのあまおう

甘王タルトとフレーバーティーのあまおう

軒先の果物店を通り抜けた奥にある「アローツリー」

軒先の果物店を通り抜けた奥にある「アローツリー」

 あまりに立派なイチゴが所狭しとのった大きなタルトを前に、初めてのお客は「食べきれるだろうか」と一瞬ひるむかもしれない。だが、「ARROW TREE」(アローツリー)の主役は旬の果物。「甘王タルト」はイチゴの王様あまおう本来の甘みを味わってほしいと、生クリームを上品な甘さに抑えているので完食しても胸焼けどころか、もう一つ買って帰ろうかと思わせる。

 アローツリー代表取締役の矢木清貴氏は、兵庫県西宮市の青果卸問屋「やまに青果」の3代目だ。次期社長の座は約束される立場だが、市場で値が付かず廃棄される果物を見るたびに、「このままでは日本人が果物を食べないようになってしまう。果物に興味を持ってほしい」と27歳の時に軒先で果物を売るカフェを思い立ち、04年6月に「アローツリー」を開店した。

 今では、フルーツをたっぷり食べさせるカフェや野菜が主役のレストランなど10店舗を展開し注目を集めるほどだが、当時の歴史ある青果卸の世界では「何をいうやら」、同業者からは「カフェではありえない立地」と反対されたそうだ。

 その環境下でも矢木氏を新しい道へ突き進ませたのは、農家が作ったよい果物を不当な価格で取引させたくない思いと、将来、果物の食べ方がわからない子どもができないように、「果物を食べるきっかけ作りをしたい」との強い思いから。

 商品開発のポイントは、ケーキ店にはまねできない果物のボリューム感だ。「サプライズもいりますが、2ピース完食できるか、も重要なこと。ケーキやスイーツを売る店ではない。果物をいっぱい食べてもらえる店にしたい」という。余計なものを足さず、果物本来の甘さを生かしたケーキは後味もよく、2つ食べても平気というわけだ。

 その言葉通り、平日の昼下がりでも客足の途絶えない店内では、ケーキの持ち帰りや店頭で果物を購入する人が目に付く。メーンの客層はスイーツ好きの若い女性が中心かと思いきや、果物や食への意識の高い40~50代。夜にはオジサンのおひとりさまも多いそうだ。

 昨年からは「プラスフルーツ」として新しい取組みも始めている。紅茶は「ムスレナティーハウス」、ジャムは「菓子sパトリー」とコラボし、フレーバーティーとジャムを展開。1月26日にはフラワーショップも開店し、新しくギフト市場にも果物を提案する。

 地元を愛する矢木氏はこれまで、西宮沿線での出店にこだわってきた。だが、今年はすでに東京の自由が丘と銀座での展開が決まっている。さらに、11月には海外に飛び出し、日本の果物店を台湾の人たちに紹介する計画だ。「気持ちがへこみそうな不景気な時代だからこそ、青果業界のベンチャーとしてブームを作っていきたい」と、次世代の果物屋を目指している。

 ◆「ARROW TREE」(西宮市池田町4-25、電話0798・23・0300)営業時間=午前11時~午後11時

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