高桑先生の飲食経営クリニックQ&A(13)原価率が低い飲食店はもっともうかってもよいのでは?

2010.06.07 373号 21面

 ◆from相談者

 ○食材原価率が30%と低い飲食店はもっともうかってもよいのではないのか?

 飲食店経営は、一般の世間から見たらうらやましい商売だと思います。それは、食材原価率が30%と低く、粗利益率(売上総利益率、または限界利益)が70%もあるからです。しかし先生のお話では、あまりもうからない……ということですが、コンビニのような物販業は粗利35%でやっています。飲食店は、粗利益が70%もあるのに、もうからない理由をお聞かせください…。

 (Y税理士(28歳))

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 ◆最終営業利益はコンビニと同等 売上げで差

 ある会社のパーティーで、税理士になりたての若い先生と出会った。彼から、上記のような疑問が寄せられた。彼は、まだ顧問先も少なく税理士としての経験も少ない。飲食店の原価率の低さだけで、「飲食店はこんなにもうかるのか…?」と思っているらしい。そこで今回は、物販店と飲食店の違いに関して述べてみたい。

 ある駅前に、コンビニエンス・ストアと居酒屋が並んでいると仮定しよう。面積はともに35坪。家賃はともに40万円。コンビニは、月商1500万円を売る。居酒屋は月商500万円。売上高の違いは形態の違いである。35坪の居酒屋で、月商1500万円も売る店は、新宿駅近くなら別だが、常識ではありえない。

 結論からいえば、両店の最終営業利益はほぼ同額となる。経費もほぼ同じになる。水道光熱費は、コンビニは24時間営業でエアコン全開にしているため、電気代がかさみ飲食店と同額になる。人件費も、24時間営業のために深夜割増(25%アップ)賃金のために、飲食店と同額になる。ただコンビニには、FC本部へのロイヤルティー(経営指導料)の支払いがある。セブンイレブンなどの大手では、試算表よりもう4%程度アップする。減価償却費も同額とする。そして最後の営業利益は、両店ともほぼ同額である。

 Y税理士も、経験を積めばお分かりいただけると思う。飲食店は、食材原価率が低いからといって、決して安易にもうかるような商売ではないのである。

 ((株)日本フードサービスブレーン代表取締役 服部栄養学園マネジメント論講師 高桑隆)

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