焼肉特集:メニュートレンド=赤身もホルモンもまぜてジュ~ 「焼肉・ホルモンはやし 東寺店」
焼肉店では、注文した肉が部位ごとに別々の皿に盛られて出てくるのが通常。しかし、一風変わった盛り方と焼き方で人気を得ている店がある。60年以上前に京都の十条に誕生し、現在京都市内に4店舗を構える「はやし」だ。この店で修業を積んだ元従業員が東京・月島に同様のスタイルの焼肉店を2009年夏に出店したところ、新ジャンルの焼肉として話題を呼び、2011年夏には2店舗目がオープン。今後さらなる広がりを予感させる京都老舗焼肉店のスタイルとは……。創業者の孫が店主を務める東寺店を訪ねた。
●各部位の肉汁と脂がまざり合ううまさ
さまざまな部位の赤身肉やホルモンを味噌ベースの濃厚なたれで一緒にもみ込み、特注の極厚鉄板で一気に焼き上げる。これが「混ぜ焼肉」や「ごちゃ混ぜ焼き」などと呼ばれる「はやし」のスタイルだ。
同店が大衆食堂としてスタートを切った1950年(昭和25年)当時、京都界隈ではさまざまな種類のホルモンを鉄板の上で一緒に焼いて食べる光景は別段めずらしくなかったという。そうした昔ながらの焼き方にこだわり、よりおいしくするための秘伝のたれや、鉄板の形・厚さを確立していったはやし。他店にはない独自のスタイルを作り上げている。
混ぜ焼肉の味の特徴は、「味噌ベースのたれと、種類の異なる赤身肉やホルモンから出る肉汁や脂が合わさることで完成する」点にある。これが部位ごとに焼く通常の焼肉では味わえない、混ぜ焼肉ならではのおいしさである。ただ「まぜる」という手法は、お互いのよさを足し算以上に高め合う可能性と同時に、相殺し合うリスクを含む難しいもの。東寺店の店主・林繁宏さんによると、プラスの相乗効果を生むカギは「全体のバランスにあり、特にたれの甘辛加減と肉の脂の量が重要」だという。そこで同店では、単にバラエティーを揃えるのではなく、バランスを重視した肉のメニュー構成を追求。同じ部位でも、たれとマッチする脂の量の肉を厳選している。
混ぜ焼肉は、それぞれのお客が選んだ複数の種類の肉をひとつのボウルに入れ、三温糖、おろしニンニク、自家製のヤンニョンジャン(唐辛子味噌)、秘伝の味噌だれを加えて丁寧にもみ込み、鉄板または皿に盛って提供される。オーダーごとに味付けを行うため、お客の要望に合わせて甘さや辛さ、ニンニクの量などを調整することも可能だ。「ただ一度目は、すべての要素が入ったもの、つまりはホルモンと赤身肉の両方をまぜたオーソドックスな味付けのものを召し上がっていただきたい」と林さん。その上で、より好みに合う肉の組み合わせや味付けを見つけるよう薦める。
ホルモンブームもあり、若い人や女性客の常連も増えている同店。店舗の拡大を検討しているほか、混ぜ焼肉の世界をさらに広げる新たなメニュー展開にも挑戦していきたいとのことだ。
●店舗情報
「焼肉・ホルモンはやし 東寺店」 所在地=京都府京都市南区西九条蔵王町62/開業=1972年7月頃/営業時間=水・日・祝日午後5時~10時(LO)、月・火・金・土午後5時~11時(LO)、休日=木(水は不定休)/坪数・席数=約12坪・24席/客単価=3500~4000円/1日来店客数=30~40人/スタッフ=3人
●愛用資材・食材:「天日干し唐がらし」 シントク(神奈川県川崎市)輸入
美しい色合いと豊かな風味
甘辛の加減が絶妙なはやしのたれ。その辛味を担っているのが自家製のヤンニョンジャン(唐辛子味噌)である。ヤンニョンジャンづくりに欠かせないのが、本場韓国から輸入されている粉唐辛子。その特徴は、深みのある鮮やかな赤色の味噌に仕上がることと、風味の豊かさにある。見た目ほどには辛くなく、程よい辛さを調整しやすい。
規格=1kg