看板料理に学ぶヒットの秘訣:満来「チャーシューらあめん」
◆飽きさせない工夫は切り方にあり 平打ち麺とサッパリ系スープも魅力
大盛り具材を売り物とするラーメン店は多い。圧倒的なボリュームは最も直截な価値訴求の手段となり、やみつきになるファンを作り出す。多くの有名店が出現したなかで、チャーシューの破壊的な量の多さでお客をひきつけているのが東京・新宿西口の「満来」の「チャーシューらあめん」。
新宿では老舗として知られる有名店だが、その名をあまねく知らしめる因となったのがこの商品。現在、1400円という価格は決して安いとは言えないものの、相変わらず多くのお客が注文している。軟らかく煮込まれた肩ロース肉のチャーシューは2~3cmもの厚みがあり、その総量はおよそ300g程度。箸で持つのに苦労するほどのビッグボリュームだ。
普通、3枚のチャーシューが入っているが、面白いのはその切り方。3枚ともに、厚み、部位(脂のさし具合)、重量を意識的に変化させ、超分厚い部分があれば、その3分の1ほどの薄さの部分もある。平均した厚みにしないところがこの店のノウハウで、厚みに偏りをかけることで、より分厚く見せる部分を作ることが狙いなのだ。形や厚みの異なる部分は、当然食感や味の印象にも微妙な差を与えるわけで、そのことがこの大量のチャーシューを飽きずに食べさせるノウハウとなっているのだ。
むろん、チャーシューそのものの味や、煮込み加減も長年研究されたものと見え、このボリュームでもきわめて食べやすく、自家製の平打ち麺や東京スタイルのサッパリしたスープの味も魅力を支えている。
●満来(東京都新宿区西新宿1-4-10)
●プロフィル
押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。