酒も自由に自分流 居酒屋に広がる“セルフの波” 「やきとり○金 新橋本店」
長引く不況に震災が重なり疲弊する居酒屋業態で、お客自身が酒をつくる“アルコールバー”が広がりつつある。初期投資を抑えたことによる低価格に加え、アルコール度数や甘さなどを自分で組み合わせられる自由さがお客のニーズに応えている様子。業務用市場における酒類消費の活性化に“セルフの波”が一役買いそうだ。
アルコールバーを積極的に展開するのはゴールデンマジックが運営する「やきとり○金(まるきん)」。同社の山本勇太社長は「アルコールバーを一度体験すると、自分流の使い方にハマるお客さまが男女ともに多い」と胸を張る。低価格化が進む居酒屋業態にあって、居抜き店舗の活用や独自のノウハウを駆使し運営コストを抑制。低価格と高品質を両立させ、着実に店舗数を拡大している。
「やきとり○金」のアルコールバーは、樽生ビールから、本格焼酎、ウイスキー、ワイン、清酒、泡盛、マッコリまで揃える。お客の自由な組み合わせによってハイボールやサワーなどを含む約70種のメニューを楽しめる。飲み放題で最初の1時間が626円。その後は30分ごとに313円で延長が可能と日常的に通える安さを実現している。
フードの主力である焼き鳥も全品63円均一と破格。大きさを通常の半分にすることで、安価で常に熱々で食べやすいよう工夫。他にも鮮魚や肉などの80種類以上のフードメニューがあり、食事もしっかり楽しみたいという女性客にも好評だ。現在は直営店を新橋、八重洲、新宿、御茶ノ水で展開。「ライセンス展開も含め400店舗を目指す」(山本社長)と意欲を燃やす。
少子高齢化などにより酒類の消費は家庭用も含め停滞基調にある。業務用では居酒屋を中心に低価格化の一途をたどるなど、さらに厳しい状況。酒は嗜好(しこう)品であるだけにお客のニーズも多様だが、「やきとり○金」はお客自身がつくるシステムを導入することに解決策を見いだしたともいえる。
ファミリーレストランなどでは清涼飲料のドリンクバーが定着して久しい。今後、居酒屋でもアルコールバーによるセルフ化が急速に広がる可能性を秘めているといえそうだ。
◆所在地=東京都港区新橋3-18-1 新橋千陽ビル2F