焼肉特集2013:メニュートレンド=ユッケ復活!生肉文化堅守

2013.01.07 406号 01面
「黒毛和牛ユッケ」(エスフーズ・手前)と、「国産牛ユッケ」(カミチク)。40g,50g,60gがあり、シンプルな白器に盛り付ければ見栄えがよく、食器の管理や洗浄消毒も合理化できる

「黒毛和牛ユッケ」(エスフーズ・手前)と、「国産牛ユッケ」(カミチク)。40g,50g,60gがあり、シンプルな白器に盛り付ければ見栄えがよく、食器の管理や洗浄消毒も合理化できる

 2011年4月に発生したO157菌を原因とする「ユッケ集団食中毒事件」により、焼肉店でのユッケ提供が事実上、不可能になったことは周知の出来事である。全国の焼肉店1900店で構成される「全国焼肉協会」(JY)では、「牛肉の生食は日本人が作り上げた食文化であり、守るべきものである」という認識のもとに、事件発生直後から事態収拾に積極的に乗り出した。そして1年半の歳月をかけて試行錯誤をくり返した結果、ついに厚生労働省の厳しい基準をクリアするユッケ提供システムを協賛会員の協力を得て開発。昨年11月9日の協会理事会の承認を得て、12月から会員店でのユッケ提供が可能となった。

 ●全国焼肉協会加盟店“共同仕入れ”で実現 納豆方式で衛生管理基準クリア

 このたび全国焼肉協会が、賛助会員のエスフーズ(株)および(株)カミチクと契約し、会員店が共同仕入れできるようになった商品が、「黒毛和牛ユッケ(冷凍)」と「国産牛ユッケ(冷凍)」。個食パックになっていることが最大の特徴で、同協会の中井孝次事務局長が言うところの“納豆方式”によって、ユッケ提供が可能になった。

 その背景には、事件発生後、厚生労働省が定めた厳しい衛生規格基準がある。それによると、生食用食肉の加工は、専用の設備を備えた場所で専用の器具を用いて、厚生労働省が指定する方法で加熱殺菌を行うことが定められ、その詳細かつ厳密な基準をすべてクリアした場合のみ生食用食肉として認められる。しかし、このような加工処理ができるのは、専門の加工事業者に限定されるのが実情だ。

 さらに加えて、調理基準も焼肉店にとっては極めて高いハードルだ。自店の調理場でユッケ食材を細切りしたり、調味(味付け)するには、「営業施設基準」に基づいて保健所の許可を得なければならない。しかし、全国約2万店の焼肉店のうち保健所の許可を得られる調理施設を持っている店は極めて少なく、今後も個々の焼肉店が許可を得ることは非常に難しい。つまり、焼肉店は、たとえ加工業者からユッケ食材を入手できたとしても、調理場で皿に盛り付けることすらできないということになる。

 そこで、考案されたのが「個食パック方式」である。パック内のユッケ食材は衛生規格基準をすべてクリアした施設で加工、細切りされているので、店側は、パックのままお客さんに提供すればよい。しかし、話はそう簡単には決着しなかった。

 「サービスをモットーとする飲食店にとって、パックのまま出すというのは受け入れがたいことです。この件でも厚労省の担当者と侃々諤々(かんかんがくがく)議論し、やっとのことで、パックの蓋だけは開けて提供してもいいという結論にこぎつけました」と中井事務局長。ただし、添付の調味液とまぜることは調理(味付け)に当たるので、お客さん自身が客席で行う。「市販の納豆パックも自分で調味液とまぜることから、『では“納豆方式”でいきましょう』ということで厚労省側の了解をいただきました」

 さらに同協会では「交差汚染」を防止するために、ユッケ専用の盛り付け皿を推奨している。ワンプレートの専用皿にすれば、什器の管理や洗浄消毒など店側のオペレーションが簡便化されるのはもちろん、お客さんにとっても見た目がよく、食べやすい利点がある。

 「厚労省が提示した『温浴加熱殺菌方法』は、実際のところ効率性と歩留まりが悪い。衛生規格基準が提示された直後から、当協会では基準をクリアし、かつ効率性と歩留まりのいい加熱殺菌方法を模索して、実証試験を繰り返してきました。残念ながら、現段階では、実験施設や費用などの壁があり、新しい方法の開発までには至っていませんが、試験を通じて有用なデータが蓄積できました。克服すべき技術的問題点も見えてきています。今後、技術革新が進む中で必ずや最適の方法を実現できるものと思っています」と先行きに期待を込めている。

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