フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(28)ワイズテーブル 鍵になるのは「XEX」の復活

2014.01.06 418号 20面

 ◆高級イタリアンの人気店だったが

 同社は、リストランテ(高級イタリアン業態)の「SALVATORE CUOMO Bros」を中核とする「XEX」(ゼックス)と、ピザの宅配及びイートイン業態「PIZZA SALVATORE CUOMO」を展開している。

 主な店舗が首都圏にあることから、地方都市での知名度は劣るものの、「XEX」が都心の一等地(代官山、愛宕、東京駅、日本橋など)に出店していることもあり数年前まで都内では、高級フレンチ「ひらまつ」と双璧をなす存在と見なされていた時期もあった。

 「だった」としたのは、ここ最近では、同社内でもカジュアルレストランと位置付けられる「PIZZA SALVATORE CUOMO」ばかりが目立つと感じるからである。

 売上面でもリーマンショック直後の09年2月期までは「XEX」事業が「PIZZA SALVATORE CUOMO」事業を上回っていたが、翌10年2月期に逆転(「XEX」事業=53億円、「PIZZA SALVATORE CUOMO」事業=69億円)してからは今期(14年2月期)見通しを含め、もはや「XEX」のワイズテーブルではなく、カジュアルレストラン「PIZZA SALVATORE CUOMO」の会社となってしまった感がある。

 経営面からみれば、リーマンショックをきっかけとした高級業態の落ち込みを、ピザのデリバリーを含むカジュアルなイタリアンで集客する戦略は方向性としては正しく、収益の落ち込みを最小限に抑えた事実からも評価できる。

 しかしながら、最近はメディアに取り上げられることもめっきり減り、外食業界でもすっかり影が薄くなっている「XEX」をこのままにしておくのは、いかにももったいないと初期の頃からの「XEX」ファンの一人として感じるのである。

 ◆ブライダル拡大はリスク

 当然ながら同社でも「XEX」のテコ入れ策を模索し、その一つの答えとして「XEX」にてブライダルを強化する施策に取り組んでいる。

 12年から、それまで外注していたブライダル事業を自社運営に切り替えており、設備面でも順次ブライダルに対応できる投資を進めているようであるが、同社が注力している「レストランウエディング」は、有名レストランや外食チェーン企業、ホテル事業者まですでに多数が参入しており、大変厳しい過当競争が続いている。

 加えて最近の「スマ婚」の人気など、ウエディングビジネスの価格破壊的な傾向も定着しつつあることと、「XEX」の店舗面積では高単価のウエディングに求められる機能やサービスを十分提供できないという両面で不利な状況にある。これは、同社のウエディング1件当たりの単価が、12年2月期2.5百万円→13年2月期2.1百万円→14年2月期(計画)1.9百万円と、継続的に低下傾向にあることからもうかがえる。

 つまり、ウエディングを「XEX」テコ入れの柱としてしまうと、設備投資の増加という資金負担の一方で、過当競争による単価の下落からくる収益力の低下という相反する状況に陥ってしまうのである。

 ◆業態の再定義を

 では、どうするのか。一つのヒントは、「XEX」業態の再定義をおすすめしたい。果たしてリストランテの「SALVATORE CUOMO Bros」の隣に「あぶり焼き」や「寿司」が必要だろうか? お客さまはそれを求めているだろうか? あるいは、最近では高級フレンチでもシェフが出向くケータリングを始めているし、ホテルでは高単価のビュッフェが盛況である。それらを突き詰めていくと答えが見つかるはずである。

 ●フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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