新店ウォッチング:「魚屋路」練馬春日町店
すかいらーくグループのビルディが、「新鮮デカネタ回り寿司」と銘打った回転ずしの新業態店「魚屋路(ととやみち)」を都内練馬区にオープンした。
魚屋路練馬春日町店は、地下鉄有楽町線の平和台駅と都営地下鉄一二号線の春日町駅のちょうど中間あたりに位置する旧ガスト店を改装したもので、環状八号線に面してはいるが、道路環境などにより売上げの伸びがなかった店舗を改装し、回転ずし参入の一号店とした。
周辺は大手外食店をはじめ、スーパー、ホームセンター、ビデオレンタル、カー用品など、著名チェーンが目白押しに並ぶ立地だが、大型スーパーなどの多くは前述の両駅に隣接しているため、中間地点にある同店は、独自集客を強いられる。そういった意味では、類似業態が乱立するファミリーレストランより、都内ではまだあまり多くない独立型の回転ずし業態に分があるといえるだろう。
明るく清潔感
店名の魚屋路とは、むかし兵庫県灘の港で陸揚げされた新鮮な魚を、有馬の温泉旅館へと運ぶ六甲山中の輸送路にちなんで名づけられたということで、店内の壁面にはその由来が大きく書き記されている。
内装は、白木を基調に、テーブルトップなどには石材を使用した、明るく清潔な雰囲気。持帰り客用も含めたウエーティング席を大きく取り、喫煙者向けのコーナーも設けている。
外装はオリーブがかった独特の黄色に黒と金という、最近の郊外型和食店では比較的流行の色使いとなっているが、都内ではまだ珍しいデザインだ。
すしの回転レーンは約二〇mで、レーンに面したボックス席は、通常のファミリーレストランのものより大きな六人掛けであり、ファミリー客を十分に意識したつくりである。
子供客忘れず
商品は一七〇円を中心に一一〇円、二三〇円、三五〇円、四五〇円などの皿が回るほか、店内の大きなメニューボードに、おすすめ商品の「大トロ(一カン)」や「季節の茶碗蒸し」(各二八〇円)などが「自慢の品」として掲げられている。また、ドリンクバーは一一〇円となっているが、もちろん各席でお茶が飲めるので、これは主に子供客用の対応であろう。
持帰り商品としても、一人前の「花」(七八〇円)から六~七人前の「有馬」(五八〇〇円)まで六種類を取りそろえており、ビルディ社では、この業態で業界への本格参入を目指しているとのことだ。
◆回転ずし「魚屋路」/会社名=ビルディ/開業=一九九九年6月/店舗面積=二六〇平方メートル/駐車台数=三三台/客席数=六九席
◆取材者の視点
「焼き肉」「とんかつ」と並んで、昨今の繁盛業態三種の神器のひとつである「回転ずし」に、すかいらーくグループが進出した。もっとも、うわさでは焼き肉店の出店も計画中とのことなので、残るとんかつ業態もすでに検討には入っているのだろう。
この店は、すしネタが通常よりも大きい、いわゆる「グルメ回転ずし」と呼ばれている業態だが、小規模チェーンで繁盛店を目指すのならともかく、全国展開を狙うつもりであれば、通常のポーションで、良いネタを安く提供するスタイルの方が良いのではないか。
さらに、すしはチェーンスタイルで提供する場合、独自性を打ち出しにくい商品である。他社と競合した場合には、ネタの品質と価格がモロに影響する。すかいらーくグループが開発する業態としては、回転ずしのシステムを基に、単なるすし店ではない新しいスタイルの店を目指して欲しい。そういう意味では、レーンに回っていた「ガーデンズ」のデザート商品などは面白い企画かもしれない。
また、せっかく白木のメニューボードを設置してあるのだから、おすすめ商品を紙に書いて張るのはやめた方が良いのではないだろうか。
臨店中に、カウンター内の職人が、握ったすし皿を子供客に直接手渡しでサービスしていたが、その職人の愛想の良さが妙に心に残った。昨今の大手チェーンでは、ほとんど見られない光景だったからかもしれない。