繁盛店ルポ・アメリカ版:シカゴ「Lettucel」

1999.10.18 190号 3面

前回に引き続いて、シカゴから繁盛店情報を送ろう。この米国繁盛店情報は、チェーン店ではなく個店の外食に参考になるようにという趣旨から、地元の繁盛店を取り上げている。しかし、今回はシカゴで三〇店舗近くのチェーン店を経営しているLettuce社を取り上げよう。

なぜ、趣旨と反するのかというと、数店の例外を除いて同じコンセプトの店はないというレストラン経営をモットーとしているからだ。

シカゴで種類の異なるレストラン群を展開し、すべてが超繁盛店に仕立てた経営者のリチャード・メルマン氏は、シカゴのレストラン王と呼ばれている。以前から注目されていた会社だが、最近特に注目を浴びだした。単なる個店レベルの繁盛店ではなく、チェーン化できる繁盛店を生み出しているからだ。

ダラスを一号店に現在六店舗になっているHMR(ホームミールリプレースメント)で有名なイーチーズというお店があるが、この店舗群はダラスに本社を構えるカジュアルレストランチェーンのブリンカーインターナショナル社が経営している。

そのブリンカーインターナショナル社がLettuce社から購入したコンセプトが、ベーカリーカフェのコーナーベーカリーだ。もともと、マジアーノというニューヨークスタイルの古典的イタリアンの横に置いたベーカリーを独立させたものだ。これが、スターバックスへの対抗馬として注目され、ショッピングモールを中心に多店舗展開を行っている。一店舗あたりの年商二億円とスターバックスより高いのが特徴だ。

さらに今年7月には米国内の既存店の不振に悩むマクドナルド社がLettuce社とコンサルタント契約を締結した。リチャード・メルマンの力を借りて新しい魅力のある店舗やメニューを開発しようというのだ。従来からマクドナルド社ではシカゴの有名シェフを採用してメニュー開発してきたが、どうもメニュー開発だけでなく、店舗のイメージなどの総合的なコンセプト開発が必要になっているようだ。

Lettuce社は店舗リストにあるように、シカゴでもトップクラスの超高級フレンチのAMBRIAから、フードコートのfoodlifeまで数多くのコンセプトを開発している。それらの店舗はシカゴを中心に出店し、成功したコンセプトはシカゴの店舗だけを維持し、他の地域での展開権を売却する。日本でもダスキンがツチバヌーチというイタリアンのコンセプトを購入して店舗展開している。

筆者は毎年5月にシカゴに行くのだが(NRAレストランショーが毎年開催される)、その際には必ず同社の店舗群を歩くようにしている。特に新店舗を必ず見る。それは、新店舗はこれから流行する業態の最先端を行っているからだ。

今年見学した新店舗は、フレンチスタイルのステーキハウスのMON AMI GABIとタイフレンチのVONGだ。今、米国はステーキレストランのブームだ。ま、景気がよいということだろうが、単なるステーキレストランではなく、テーマのあるステーキレストランだ。

MON AMI GABIは、フレンチビストロの雰囲気の中で薄切りステーキを食べさせてくれる。この店舗は、一九年の歴史を誇る高級フレンチAmbliaの横で運営していたグランカフェというカフェを改造したもので、以前はがらがらだったが、ステーキになってから大繁盛だ。

三種類のステーキがあり、油のない薄切りのステーキ、従来のステーキ、フィレステーキだ。特徴はソースで、ブルーチーズのソースや、ワインと玉ネギ、マッシュルームソースなどで、フィレはフォアグラで淡白さを補う工夫をしている。マネジャーと話したら、今年の9月にラスベガスの高級カジノのパリス内に、この店と、高級フレンチのエッフェル塔(コースメニュー価格が一一五ドル)という店を開店するそうだ。

VONGはフレンチの雰囲気の店で、美しく盛りつけたタイ料理を提供するというコンセプトだ。米国の料理のトレンドはイタリアン、テックスメックス、カリビアンの順だが、次に来るのが、パンパシフィック料理だ。日本料理、中華、タイ、ベトナム、カリフォルニア料理のミックスと思っていただきたい。米国は東南アからの消費財の輸入を通じて現地の料理に親しむようになったが、現地の料理では原始的すぎて米国人には物足りない。そこで洗練されたフレンチとミックスしようというものだ。

foodlife(フードコート)はできてから八年ほどになるが、大変ユニークな店舗だ。内部には、イタリアン、テックスメックス、サラダ、ハンバーガー、ラップ、中華など、手づくりのファストフードのキオスクが並んでいる。ハンバーガーであれば、生のひき肉を注文に応じてスクープですくい、鉄板の上に置き上からスパチュウラでつぶして焼きはじめる。

付け合わせの野菜は好きなものを注文する。焼き上げるのを見ているだけでよだれが出て来るほどだ(日本では博多キャナルシティ内グランドハイアットのフードコートのfoodliveという一字違いの店がそのデッドコピーだ)。この店舗は八年以上経過しているが、毎年人気の落ちた店舗を改造し、新しいファストフードのコンセプトを導入している。だから、毎年、ここを訪問せざるを得ない。

料理だけでなく店舗デザインやサービス雰囲気まで新しいコンセプトを探し求めるときにはチェーン店舗の方だけでなく、個人営業の方も参考になる会社だ。ぜひ5月のレストランショーの際に訪問してみよう。

((有)清晃・王利彰)

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