で・き・る現場監督:こだわりらーめんゆきむら亭阿見店・西山繁店長
醤油ラーメン四種、味噌とごまだれラーメンが各三種、それに餃子、春巻、おつまみチャーシューなどのサイドメニューという、絞り込んだメニューで展開しているこだわりらーめんゆきむら亭は、茨城県内に直営店だけでも一一店舗を構えるチェーンだ。
ラーメンの味は、あっさりとこってりのバランスが程よくとれた万人向けで、ここ阿見店ではランチタイムともなれば、待ち客がいない時がないというほどの盛況ぶり。国道沿いにありながら、女性客が七割を占めるというのが人気の証拠だ。また、サイドメニューにつまみ系が多いことから、夜は一転して居酒屋のような雰囲気になる。
この阿見店で一年前から二代目店長を勤めているのが、飲食業界に入ってまだ三年半という西山繁さん。店長になる前は主任を任されていたのだが、ある日突然「明日から店長だ。頑張れ」と、別の店への転勤を任命されたという。
「正直いって、かなり戸惑いました。もちろん当時主任だったので、いつかは店長になるだろうな、とは思っていたのですが。不安の方が大きかったですね」
一番頭を痛めたのは、スタッフとの接し方。いくら味やサービスが同じチェーン店とはいえ、当然、店によってそれぞれのカラーがある。本来ならそうした特徴をふまえた上でワークスケジュールを作るものだが、それがまったく分からない。
また、昼間は主婦のパート、夜は高校生のアルバイトが多いため、西山さんの持ち味ともいえる体育会系のノリは通じないということでも神経を使った。
「例えは悪いかもしれませんが、スタッフを馬、私を騎手になぞらえて、ある程度手綱を緩めて走らせてみようと思い定めたんです。自分で勝手に走ろうとする馬はさほどいるわけではないだろうから、そうした方が気持ちよく走れると思ったわけです」
西山さんの思惑が通じたのか、今ではよほどのことがない限り、手綱を強く引いたり、鞭でたたく必要はないという。
「スタッフが気持ちよく働いている店は、お客さまも気持ちよく来店できる」と考える西山さん。その言葉どおり、スタッフは元気な声と最高の笑顔で迎え、お客もアットホームな雰囲気を求めて来ているのが感じられる。
しかし最近、新たな問題が持ち上がった。地域の活性化により、ここ数ヵ月間で周囲に飲食店が立て続けにオープンしたのだ。ライバルのラーメン店も出店し、売上げは前年の九五%にダウンしたという。
そんな状況にあっても、西山さんは決して焦らず、これまでどおりの方針を貫くという。
「目先の売上げだけを気にして、味付けを変えたり、スタッフにハッパをかけても仕方ないですからね。むしろわれわれスタッフ全員が、いつも明るく元気でいることが大切だと思うんです」
そのため、西山さんはこれまで以上に明るい店の雰囲気作りに心を砕く毎日だという。
「仮に元気のないスタッフがいたとして、その人にいくら言葉で『元気出せ』って言っても無理だと思うんです。時にはおもしろいことを言ったり、笑わせたりっていう心配りをしてあげた方がいいと思います」
徹底した雰囲気作りを行えば店はもっと元気になるはずだ、と考える西山さん。当面の課題は自分自身が二面性、三面性を持ち合わせ、TPOに応じた雰囲気作りを行うことだという。
西山さんの変身ぶりが、今から楽しみだ。
◆にしやま・しげる=昭和42年東京生まれ。大学卒業後、建築業、運送業に勤めながら、自分の本当にやりたいことを模索、もともと料理を作るのが好きだったこともあり、四年後、飲食業界への転職を決意する。
「遠回りしたとは思っていません。店長とはいわば店のトータルコーディネーター。異業種での経験が役に立つ時が、きっとくると思っています」
趣味は水泳やラグビーなど身体を動かすことだが、週一回の休日は、ビデオ鑑賞に費やすことが多い。
◆(株)雪村/代表取締役=高野勉/創業=昭和61年/本部所在地=茨城県土浦市永国九九六‐二、Tel0298・26・6263/店舗数=二四(うちFC一三店舗)/年商=二三億円
◆こだわりらーめんゆきむら亭阿見店/茨城県稲敷郡阿見町中央五‐三四‐九、Tel0298・88・4044/店舗面積=三四坪・五〇席/従業員=正社員三人、パート・アルバイト二五人/客層=二〇~四〇代、女性七割/客単価=九五〇円