うまいぞ!地の野菜(21)奈良県、現地ルポおもしろ野菜発見=大和高田のしろな

2000.01.03 195号 13面

「市場で見た大阪しろなを高田でも試してみようと栽培を始めたのが二〇年前。開設したばかりの奈良市場に出荷したところ反応は良好。以後少しずつ栽培者も増え、今では地元の野菜として定着してきました」と語る増田順彦さん(五 三)。話す間にもしろなを一株一株手際よく並べては結束していく。

大阪しろなは、白菜と体菜(シャクシ菜)との交雑で生まれた野菜。大阪天満橋付近で栽培されていたことから、またの名を天満菜とも呼ばれ親しまれてきた。しかし、戦後の白菜、キャベツの台頭で次第に影が薄くなってきている。

「市場が開設されたのを機会に何か新しいものをやってみようと目につけたのが、この地方にはなかったしろなだったのです」

当初は果菜の合間に栽培したり、関西では珍しい小松菜にも手を出すが、最終的にしろなに絞り込む。

自ら納得する品種で出荷したいという思いは人一倍強く、前年より少しでもよくしようと一年一年が試行錯誤。満足のいくしろなが誕生したのは三年前からという。

増田さんのこだわりしろなは、大阪しろなにくらべ白くてたくましい茎をもち、葉の部分も葉脈が少なく肉厚、色も艶のある緑である。

また、奈良では食生活の違いから、大きいものが好まれる傾向があり、収穫時の身の丈は大阪より五~六㎝長く、三〇~三五㎝と大型だ。

川と川の間に位置し、砂地土壌にある増田さんのしろな畑は一町歩(約三〇〇〇坪)。周年栽培で一日八〇〇束を出荷する。

栽培方法は、夏と冬との差はあるが三~五日で発芽、二二~六〇日で収穫を一サイクルにする。このサイクルに合わせ、各畝ごとに生長差がつけてある。また11月から6月までハウス栽培、夏は露地栽培で生長調整し、周年出荷体制をとっている。

朝5時起床、市場に出荷後朝食をとり、8時から12時、午後は1時から日没までが作業時間。働き手は奥さんのマサ子さんと時々手伝う八〇歳の父親。パートにはいっさい頼らない。

しろなの労働配分はとの問いに、「結束などの出荷作業が八割、種まき、手入れなどが二割です」と意外な答えが返ってきた。

葉をきれいに整え、株の大きさをそろえ、五~六株束ねた商品は「気品があってまるで芸術品。市場では増田さんのしろなとして知らぬ者はいない。指定買いする人もいるくらい」と絶賛するJAならけん高田支店松田真二副支店長。

同じ畑で同じように収穫しても、結束の仕方で値段が変わり、それだけに神経を使うとのこと。

「ここまでこだわっていけるのも自分の代まで」ということで、将来的には、パートさんでもできる袋詰めの出荷も考えている。

「結束問題が解決すれば、栽培はそれほど体力を必要としない。体の続く限り作っていきたい」と増田さん。

生産者が集荷、出荷を共同体制にすれば規模拡大にもつながるだろうが、市場に近いため、どうしても個々人での出荷となる。今後、これらの栽培農家をどう束ねていくかが大きな課題となりそうだ。

■生産者=増田順彦(奈良

県大和高田市田井一三一

‐三、0745・22

・7765)

■販売者=JAならけん高

田支店軟弱野菜部会(奈

良県大和高田市南本町二

‐一四、0745・5 2・3324、FAX0 745・52・902

4)

■販売価格=すべて市場出

荷。一束(三〇〇g)約

一〇〇円。安くて五〇円、

高くて二〇〇円になるこ

とも。

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