飲食業界のアイドルを探せ(18)末広食堂・李香純さん

2000.05.01 203号 23面

「私、将来は翻訳家になりたいんです」

目を輝かせて夢を語る二一歳の李さんは、先ごろ、カナダでの留学を終えて帰国したばかり。とはいえ、ここ末広食堂でのアルバイトはもう二年以上になる。

本当は留学を機に、やめるはずだった。

「アルバイトが長期間休むなんて認めてもらえないだろうし、店に迷惑をかけることにもなりますから」

が、店長はじめスタッフ全員が「帰国したらいつでも戻っておいで」と優しく送り出してくれたのだという。李さんの人柄を買ってのことだ。

サブ店名に「惣菜とワインと洋食と」と付くだけあって、ここ末広食堂は、イタリアンを中心とした料理にワインやカクテルが楽しめる、女性に大人気の店。待ち客がいない時はないというほどの繁盛ぶりだ。李さんはここで、ホールやドリンクカウンターを中心に仕事をこなす。

「毎日目がまわるくらい忙しいんです。スピードが第一なので、いつも心の中で、早く、早くって自分をあおっています」

しかし、どんなに忙しくてもお客に対するサービスは忘れない。

オーダー時には「混み合っているので、少々お待ちください」、料理を運んだ際には「大変お待たせしました」といったように、必ず一言添えることにしているのだ。

ここでのアルバイトでは、料理をはじめ、人間関係や人との接し方を熱心に学んでいるそうだ。

そんな李さんは、在日韓国人の二世。カナダから帰国したばかりだというのに、今度は母国語を勉強するため、韓国に留学する予定だという。

韓国から帰国したら、またここで働きたいですかと聞いたところ、「もちろんです。実をいうと、今から店長に頼んでいるんです」とにこやかに答えてくれた。

◆末広食堂=東京都中央区銀座五‐六‐一二、03・3572・1413

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