全国カレー繁盛店特集:新潟「広東飯店」
広東飯店は、その名前の通り、広東料理と海鮮料理で知られる新潟市内の中国料理店。同店メニューになぜかあるのが、本場インドカリー「加哩溜飯」(カーリーリューハン、八〇〇円)。このカリーを食べるためにわざわざ足を運ぶ客も多く、中国料理店でありながらカレー専門店に負けないほどの人気を得ている。
広東飯店のカリーの人気の秘密は、独特のルーの辛さにある。とにかく辛く、食べ終わるころには、汗が流れ出るほどの刺激はあるが、辛さの中にもまろやかなコクと甘みがあり、そのバランスは絶妙。ライスとともに添えられた手作りのチャパティも好評で、ライスとは違った食感で、微妙なルーの甘さを感じることができる。「作り方はまねされると悪いから企業秘密だよ」とのことだが、一〇種類以上もの香辛料のブレンドがポイント。
「それぞれの香辛料の分量がひとつでも変わると全体のバランスが壊れてしまいます。この味を出すためには香辛料のバランスが絶対に大事なのです」とご主人、小沼克彦さんは語る。
しかし、なぜ中国料理店で本場インドカリーなのか。その理由は、日本で初めてオリンピックが開催された昭和39年にさかのぼる。
当時、新潟のホテルで修業していたご主人が、東京オリンピック選手村のコックとして、新潟県から派遣された七人のコックの中に選ばれたのだ。そして、インド選手団の料理担当となり、インド本国から派遣されていたニューデリーホテルの料理長、キャレラン・サミエル氏の元で、約一ヵ月間カレーを作り続け、本場インドカリーの味を習得した。店内には当時のサミエル氏とご主人の友好関係を物語るモノクロ写真も飾ってある。
「とにかく、彼の作るカリーがおいしくて。今まで食べたことのない味で衝撃的でした」と、語るご主人。「でも特徴といわれても、覚えてきたことをそのままやっているだけ。このカリーが一番おいしいと思っているので、他の店のカリーをチェックしたり、新たに研究して味を変えようとは思わないですね」
このこだわりと自信が、中国料理店でありながら、本場インドカリーを名物にできた理由に違いない。