名古屋版:繁盛店ルポ:「久鐵あらたま店」

2000.07.17 208号 23面

地下鉄新瑞橋駅近くの老舗焼き肉店「久鐵あらたま店」。愛知県東海市に本店を置く「牛焼肉久鐵」の二軒目で、Jリーグ・名古屋グランパスエイトの本拠地、瑞穂競技場近くの焼き肉屋さんといえば知らない人はいないはず。一九七三年にオープンし、今年で二七年目を迎えるこの店は、若者からお年寄りまでの幅広い層で人気を集めている。広い店内の一階ホールは八〇人、二階の宴会場は最大七二人まで収納可能だ。

「当店ではすべて飛騨和牛を使用しています」と城所春男店長。「飛騨和牛といっても黒毛和牛にこだわっています。輸入牛肉と比べたら軟らかさも違いますし、肉質がよく独特の臭みがないですよ」と黒毛和牛の特徴を語った。

中でもおすすめの一品である「中おちカルビ」は、一日に提供できる量が限られている限定品で、営業中に売り切れることもしばしばあるという。

一方、もう一つの特徴は何といってもメニューの多さだろう。肉類、韓国料理合わせて一五〇品。「モットーは低価格でおいしい肉の提供ですが、ヘビーユーザーにも耐えうるメニュー設定もしています」

「お試しメニュー」は、低予算で同店のこだわりメニューが味わえるとあって評判は上々だ。同時に高級肉だけを使用したメニューもあり、老舗焼き肉店の風格を感じさせる。

最近誕生した「とくとくファミリーセット」は、お値打ちさが受けて人気のあるメニューだ。「Aセット」は和牛カルビ六皿分とキャベツ一皿がついて三九八〇円。「Bセット」は和牛カルビ三皿分と和牛赤身ロース三皿分、キャベツがついて二九八〇円。しかも、平日なら両コースともに中ライス二人前とキムチ一皿がつく。

焼き肉激戦区・名古屋で生き残るために期待の大きい新メニューといえる。

こだわりの強さは肉だけで終わらない。焼き肉のおともで最近日常的に食べられるようになったキムチ。こちらでは韓国・安東農協と提携し、選び抜かれた唐辛子を使用して漬けたキムチを提供。また、肉を包んで食べるサンチュは無農薬にこだわっている。店長いわく、「うちの社長のこだわりですよ」。

しかし店内を見渡すと、「網交換申し付けください」とのポスター、一品一品大きな文字で目に飛び込んでくるメニュー、メニューにうたっていない料理を提供する「黒板メニュー」など、店長のこだわりも随所に。

網交換の徹底、味付け、盛り付け、スピード提供など、ただおいしい肉を食べてもらうだけでなく、その肉をいかに快適に食べてもらえるか、にこだわった結果だろう。

また、各テーブルに「良かったらおほめください、悪かったおしかりください」と書かれたはがきが備え付けられている。久鐵全店で実施しているこのはがきによって、客の生の声を直接サービスに生かそうという積極的な姿勢も伺える。

今後は、「低価格チェーンに流れる食べ盛りの子たちをいかに呼び戻すか」を真剣に考えたいと話す。そのためにも良質の黒毛和牛肉を柔軟な価格設定のもとに提供したいという。そしてそれを貫き通そうとする姿勢こそが、激戦区といわれる名古屋で勝ち抜くためのカギとなってくる。

●売れ筋メニュー

〈一位〉和牛中おちカルビ(五八〇円)

〈二位〉塩タン(七八〇円)

〈三位〉和牛ロース(八五〇円)

●店舗メモ

◆「久鐵あらたま店」(名古屋市瑞穂区弥富通り一丁目、052・833・8929)営業時間=午後5時~午前0時、毎週月曜日定休

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