外食産業活性化への提言 スエヒロレストランシステム・干田弘義社長
デパートの売上げが二〇ヵ月以上もマイナスということに象徴されるように、小売業界はどこも大変な冷え込みです。
私が考えますに、いまの日本の経済不振はバブルがハジけての構造的不況、それからもう一つはマインド不況、これはマスコミが「不況だ、不況だ」とネガティブな面ばかりを書き立てるせいもあるんですが、この二つの面でかつてない不況に見舞われているんだと思います。
それにしても、現実は厳しいというのが偽りのない実感です。私どもは銀座の高級ステーキレストランから新たな業態として、一六年前から郊外立地のファミリーレストラン「すえひろ5」を出店し、現在計八〇店をチェーン化しているのですが、客単価で一〇%減、客数で一二、三%減と、やはり消費の低迷による営業の不振は否めません。
すかいらーくさんが業態を変更して、低価格志向の「ガスト」をチェーン化されるということだそうですが、決して他人事ではなく、今や「低価格」というのはわたしどもにとっても、大きなテーマとなってきています。
現に私どもも業績の悪い「すえひろ5」を業態替えしまして、イタリアンレストランの「ピアット」としてチェーン化を進めているところです。
業態は二年前に高級イタリアレストランとして、田園調布に出店していたものですが、これをブレークダウンしてカジュアル化を図ったものです。
九二年9月に東京・文京区の春日(伝通院)にテストショップを出しまして、データを取っていたんですが、売上げで四〇%、客数で六〇%アップと大変に好調な成績を収めましたので、これをチェーン化していこうということで、伝通院、秦野、川口、ひばりケ丘などすでに四店舗を開設、ここ数ヵ月内に一〇店舗程度出店する計画です。
この業態はスープ、サラダ、ピザ、パスタ、肉、魚料理などフードメニュー約八〇種をラインアップしたものでして、単品の中心価格が四〇〇~五〇〇円前後、客単価が昼七〇〇~八五〇円、夜一〇〇〇円前後、客層が若い女性、ヤングミセスなど五、六〇%ということでして、カジュアルで低価格志向の業態としては、大いに可能性があるとみているのです。
スエヒロがイタリアレストランを出すと不思議がる方々もおられますが、すでに九三年4月には葉山にしゃぶしゃぶ・和食の店も出店しておりまして、これからはステーキの「スエヒロ」にこだわらず、魚介類を使った業態の開発にも挑戦していく考えです。
もちろん、看板商品のステーキ料理を見限るというのではなく、この分野は店舗運営面の活性化を図り、質と価格で勝負していくということです。
とくに食肉の仕入れにつきましては、国内調達からコストの安い、しかも肉質も和牛と遜色のない、オーストラリアなど海外にシフトしていく考えで、最終的には国内二割、海外八割の比率で具体化していく方針です。
とにかく、この不況を乗り切るためにはあらゆる面での見直しをおこない、コストの削減、経営の効率化を徹底する考えでおります。
そういう意味におきましては、九三年は「リストラ元年」という位置づけでしたし、新年もこの第二年度としてリストラを積極化していく方針です。