’94外食産業業種・業態別展望 イタリア料理=不況でチェーン展開加速
今は下火になった趣もあるが、去年くらいまでは“イタメシ”ブームで、伝統的に人気のあったフランス料理に代わって、イタリア料理が注目を集めていた。
しかし、イタリア料理といっても一般的にイメージするのは、スパゲティやピザといったパスタの類で、本格的な料理というのはどんなものか、それに通じているのは極めて少数派だといえる。
イタリア料理はもちろん、パスタ類から肉・魚介類までバラエティーに富んでいるが、パエリアやリゾット、ピラフなどのようにコメも多用する料理形態であるので、西洋料理の中ではスペイン料理とともに、日本人の味覚に合った料理として根強い人気があるわけだ。
ところが、日本ではフルメニューに対するニーズは少なく、パスタやピザ、ピラフなどに代表されるように、一定の料理を特化する形で好まれてきており、また、店サイドもそういった形での料理提供が一般的だ。
イタリアントマトは“イタトマ”の名で若い女性に親しまれているイタリアレストランだが、店の看板商品といえば、スパゲティと手づくりのケーキということで、これの商品で店の売上げが八、九割を占めるという。
メニューはトータルで一二〇種。食事メニューにはスパゲティのほか、グラタン、ドリア、リゾットなどもラインアップしているが、これらの食事客は少数派でオーダーは少ない。
客単価は店によって異なるが、平均的にみれば昼・一〇〇〇円前後、夜・一三〇〇~一五〇〇円といったところで、これからみても、料理のオーダー数は少ないということが分かる。
中心客層が二〇~三〇代の若い女性であり、“イタリアレストラン”といってもライトミールでの利用形態で、看板商品のスパゲティとケーキに集中するということだ。
しかし、店舗展開は順調に推移しており、12月末現在、北海道から沖縄まで全国に一四〇店を出店している。
出店については年間一五店のペースで具体化しているが、ポストバブルの不況下で出店コストが二、三割ダウンしているので、かえって出店が容易でチェーン展開に加速がついている。
したがって、新年度は通常の倍の三〇店を予定しており、さらにチェーンスケールが拡大する。このほか、新年度の政策としては、消費不況に対応して適正価格と付加価値商品の開発に取り組み、減少気味の客数を確保する方針だという。
カプリチョーザは直営九店、FC二一店の計三〇店をチェーン化するが、イタリア直輸入のトマトベースを売り物として、ボリューム感と手作りの味を訴求、独自の集客力を発揮している。
このため、不況下にもかかわらず、店はどこも列を成すほどの盛況ぶりをみせており、人気の高さを証明している。
メニューはアンティパスタ、ピザ、スープ、カルティ、ソース、煮込み料理、スパゲティ、サラダ、デザート、イタリア産ワインなど一応のものを揃えており、さしずめイタリア料理のカジュアルレストランといった趣だ(フードメニュー四四種)。
《値ごろ感が課題に》 メニュー単価はアンティパスタが一九〇〇円以内、ピザ一五三〇~一五五〇円、カルト一五〇〇~一六〇〇円前後、スパゲティ一五七〇~一六三〇円で、価格だけで判断すれば高単価ということになるが、しかし、料理はすべてボリュームのあるパーティサイズで、多人数向きの価格設定となっている。
人気メニューはやはりスパゲティで、ナスとホウレンソウのスパゲティ一六二〇円、ニンニクのスパゲティ一五八〇円、イカ墨のスパゲティ一五八〇円などが評判だ。
客層は若い男女が主力だが、休日にはファミリー客も多くなる。客単価は昼・一二〇〇~一三〇〇円、夜・一七〇〇~一八〇〇円。
売上げは好調に推移しており、目標を十分にクリアしているが、やはり現下の不況対策としては、新規出店のほか、品質の維持と値ごろ感を課題に、収益力を向上させていきたいとしている。
東花房はジローレストランシステムの経営で、「伊太利亜小料理」をコンセプトにしている。すなわち、イタリア料理に和の「粋」を取り入れた業態で、多人数対応の小皿料理を中心にして、“居酒屋”の運営形態に近づいたレストランサービスだ。
このため、純粋な意味ではイタリアレストランとはいえないが、しかし、この業態が消費者に支持されていわば、それもよしとしなければならないわけだ。
フランス料理が日本の会席料理を取り入れて、“ヌーベルキュイジーヌ”として注目を集めたこともあったわけだから、一つの食文化のデビューでもあり、フードサービスに課題を投げかけている。
現在の出店数は新宿、渋谷、日比谷、お茶の水、上野など一一店。小皿料理の代表的なものは、おコメのサラダ伊太利亜風三八〇円、オムレツピッツァ六〇〇円、豆腐コロッケチーズ風味五八〇円、アンディーブと大根の梅風味六〇〇円などで、イタリアワイン(一五〇〇~三八〇〇円)も各種揃えている。
客単価は三二〇〇~三三〇〇円。客層はヤング層が中心だが、中堅サラリーマンの宴会利用も増えてきている。売上げは好調で店舗当たり前年比一〇五%増だが、不況時の今後の考え方としては、さらに出店を活発化していくこと、客数を落とさないために客単価を引き下げる工夫も一つのポイントとし、一万円で一回より三〇〇〇円での三回を集客の目安とする考えだ。