企画特集=持ち帰り寿司・回転寿司の市場戦略 甚兵衛大蔵店

1993.12.06 41号 13面

すしのテイクアウトショップ「甚兵衛」は、二〇年前、江戸時代をイメージした白壁造りの店舗で、具(ネタ)にこだわらないすし商品を開発し外食市場に参入してきた注目のチェーン企業であった。

だが、バブル経済時に不動産業に手を染めた結果、バブル破綻のあおりを受けて、今年2月に会社倒産に追い込まれてしまった。このため、創業者の手塚章臣氏も業界から姿を消すこととなった。バブルに踊らされて、本業を瓦解させた例がここにもあるわけだ。

会社倒産前は「酢めし細工、甚兵衛」を軸に、寿司喫茶、寿司バー、回転寿司、ケータリングと業態を拡大して、FCシステムの展開と共に全国に二〇〇店を出店していたのだが、現在は函館、盛岡、千葉茂原、大阪など力のあるFC店がグループ化を図って、独自のすしビジネスを展開している。

東京地区については、直営店であった世田谷大蔵店が単独店として残り、甚兵衛の存在をアピールし続けているところだ。

この店のオーナーは大塚義昭氏で、元甚兵衛チェーン本部のFC担当部長をしていた人だ。店を買い取っての開業で、オーナー経営者として再スタートをしたわけだ。

店舗面積五坪。売場が僅か三坪というスペースで、文字どおりにテイクアウトオンリーのミニ店舗だ。創業してから一二年になるが、かつては直営でナンバーワンの売上げをキープしていたこともあった。

現在は消費不況で以前ほどの売上げは出ないが、それでも月商三〇〇万円を確保している。坪月間売上げ一〇〇万円、坪一日四万円(二五日営業)の計算で、高収益を上げているということになる。

営業時間は午前10時から午後9時まで(月曜定休)。従業員(パート、アルバイト)は朝・昼三人、夕・夜四人というシフトで、オーナーの大塚氏は自らがフルタイムで店に出ている。

独立開業だけあって大変なガンバリというわけだが、店の立地は周辺が住宅街であるので、すし需要は旺盛なわけだ。商品は本マグロを使ったにぎり(七〇~一〇〇円)をはじめ、太巻(四五〇円)、中巻(一二〇~二〇〇円)など五、六〇種で、このほか弁当(六六〇~一三〇〇円)もおいていたが、これは現在のところ手が回らないので中止状態にある。

資本の蓄積を待って将来的には多店舗化とケータリング事業なども実現したいところだが、今のところはこの店舗での収益を上げることが当面の課題と考えている。

売上げはにぎりと中巻で全体の八割を占める。客単価は八〇〇~九〇〇円前後。六、七割が女性客で、土日には夕食やパーティ用に盛り合わせ商品(三五〇〇円)などがよく出る。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら