地域ルポ 広尾(東京・渋谷) 下町の風情 外人目当てのFF店が目立つ

1993.10.04 37号 4面

地下鉄日比谷線広尾駅は一日の平均乗降者数が六万二〇〇〇人と小さな街だが、しかし、山の手にあって街並は下町の風情もあって、和やかな雰囲気が漂っている。

この街は渋谷区の広尾五丁目にあって、南北を貫く外苑西通りと東西方向の明治通りに挟まれる形で拡がっており、街の正面は外苑西通りを挟んで港区(元麻布)と接する。

街のメインの商店街は「広尾商店会(街)」で、外苑西通りの広尾橋交差点から西方向に伸びる地域に商業ゾーンが展開している。この商店街は組織的には昭和22年に一体的にまとまったもので、それ以前は住宅と店舗が混在するといった形で、面としての商業集積はみられなかった。

もっとも現在も通りの裏手や路地に入れば、木造のアパートなどが多く存在しており、とくに面的な拡がりをもった商店街を形成しているわけではない。

この商店街は、T字型とL字型を組み合わせた複合型の通りを形成しており、変則的な商業集積をみせている。通りの幅一一m、総延長六七〇m。三つの街区に分かれており、ここに約二〇〇店舗が出店している。

まず、商店街の入口にあたる外苑西通りの広尾橋交差点から、商店街を概観してみる。

この交差点近くには地下鉄の出入口が二カ所あって、地域では人の往来が最も激しいところであるわけだが、実は今年5月にリニューアルオープンした明治屋(広尾プラザ)や(ガーデンプラザ広尾)などの大型商業施設が立地しているので、それだけ買い物目的の来街者も多く、街の集客装置としての機能を大きく果している面があるのだ。

これら施設にはもちろん各種の飲食店舗も入居しており、その面での来街動機も喚起している。

また、交差点から北方向、すなわち西麻布に向っては通りの両側には、日本料理店や西洋レストラン、居酒屋、ラーメン店など中小の飲食店舗が展開しており、商店街とは別個の商業ゾーンを形成している。

交差点から東方向はバス道路で、隣接地に広大な有栖川宮記念公園が位置している。行政地番では港区の南麻布や元麻布で、スイス大使館やドイツ大使館、都立中央図書館、自治大学といった大使館や公共施設が存在する。

これらエリアや施設への起点が広尾橋交差点ということになり、人の往来が最も顕著という状況を呈しているのだ。

一方、交差点から西側、すなわち、広尾商店街周辺には聖心女子大や日赤医療センター、日赤看護大、また、キューバ大使館やガボン、パラグアイ大使館など、さらには都営広尾五丁目アパートや広尾ガーデンヒルズといった高層集合住宅や高級マンションなどが点在しており、山の手らしい街並みをみせている。

広尾商店街はこの中にあって、低層でしかも間口も狭く、むしろ時代に取り残されたという感じがする店が多く、それだけに下町的な風情もあるのだが、この商店街はまた禅宗で知られた祥雲寺があることで、寺町としてのイメージもあり、このため、商店街は毎月5日の縁日は門前市としての賑わいもみせている。

祥雲寺は商店街の入口(広尾橋交差点)から約二〇〇m先の突き当たりに位置しており、さらに商店街はこのお寺から南および西方向へと、明治通りにぶつかるまで二方向へ伸びている。

広尾商店街はデータが古くなるが、昭和48年に区がこの街の商業状況を診断した報告書によると、店舗数は買回品(五三店)、最寄品(四九店)、飲食娯楽(三五店)、サービス(一六店)、その他(二七店)を合わせて計一八二店を数えている。

そして、消費者の実態調査からみた街の性格は、近隣独立型の商圏で、毎日の来街者が七〇%、隔日一〇%で合わせて八〇%。

街への来街手段は徒歩九三・六%、電車・バス五・七%で、この所要時間は五分以内が六〇%近く、二〇分以上が約六%で、若干広域からの来街があるものの、基本的には地域からの来街者が大半を占める結果となっている。

その消費行動は飲食を含め最寄品七九・四%、買回品一四%で、しかも、これら購買動機も「家が近いから」が八〇%を占めており、数字の上からも地域密着型の商店街ということが理解できる。

これら街の性格は現在も大差はない。しかも、街に中心軸がない、施設的にも求心的役割を果す核店舗が存在しないということでも一致している。

明治屋が高層化リニューアルオープンしたといっても、量販店やデパートのような商業集積はなく、地域外からもより多くの顧客を呼び込むという集客装置にはなっていない。やはり、地域の消費特性に合わせた施設展開となっているのだ。

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