絶対失敗しないための立地戦略(14) 人口ピラミッドは“魚影”
《年齢別の構成》 立地戦略を判断する上で、大きなウエートを占める人口動向のなかでも、最も大切なのは、人口の増減のほかに「年齢別人口構成」(人口ピラミッド)。
人口ピラミッドは、出店対象エリアの年齢人口構成がどのようになっているか見極める上で欠かせないグラフ(このグラフは、大抵、市町村などで発行している統計データの人口の項目の中に掲載されているので、これを使用すると便利)。
首都圏の郊外拠点都市などで、都心に近く、比較的早い時期に大型分譲が行われ、街並みの落ち着いたベッドタウンエリアなどの人口ピラミッドを見ると40~50歳を中心とした中年と、その子供達である15~20歳前後のヤング層が中心になっていて、いわばヒョウタン型を形成していることが多く、逆に、都心から、かなり離れており、マンションなどを中心とした、街並みの形成がまだ若い地区の人口ピラミッドは、年齢構成がそれぞれ10歳ほど若くなり、30~40歳台と、その子供達である5歳から10歳前後の児童層の双コブラクダ型であるケースが多い。
この二者を例にしてみると、前者のいわば成熟したエリアは、収入のなかに占める住宅ローンの割合も低く、可処分所得も多く、ゆとりが比較的あり、外食に対しても口がこえており、ある程度専門店化志向した店が繁盛店の中心になっている。旧態依然としたラーメン店や一般食堂、出前中心のそば・うどん店、なんでも屋の喫茶店‐‐。といった典型的な旧体質の店は歓迎されない。そば・うどん店でも、少し高級化志向した専門店であり、しゃれた洋食屋であり、パスタ専門店‐‐というわけである。
後者の“未成熟な若い街”では、収入も多くなく、全収入の 1/3近くにも達する重いローンをかかえ、可処分所得は少なく(外食志向は極めて強いのだが…)、ファーストフードや、ラーメンチェーン店、ファミリーレストランチェーン‐‐といった、単価が一〇〇〇円前後の店が中心となっているケースが多い。
このように大げさに言えば、「人口ピラミッド」を眺めただけで、そのエリア、街に出店する際のターゲット層や、店の規模、業態、ランク、メニューに至るまである程度予測してしまうことができるのである。
《庭で分かる!>》 こうした人口ピラミッドにプラスして、その街の全体の様子を眺めてみると面白い。敷地面積が一戸当たり70~80坪もあり、しっかりと庭が整備されている街区が、その街の中心となっている街は、いわば“成熟した、ゆとりある街”であり、食文化度の比較的高い店の出店に向いており、マンションや団地、50坪以下の小区画一戸建てで、庭の整備があまり良くない(庭がよく手入れされ、門扉が立派な街は、懐にまちがいなく余裕がある)。街区は食文化度の低い、大衆店向きのエリア‐‐というわけである。
街の全体像と人口ピラミッドは不思議と合致する場合が多いのである。
以上のように、人口ピラミッドは、いわばその街の顔を表すものであり、その街々によって、表情のように微妙に異なるので、この当たりをよく見極めたいもの。出店する際の重要な参考データであることを覚えておきたい。
(人口ピラミッドは、主に郊外エリアに出店の場合の参考資料であり、都心の一等地の場合は、その街への来街者、周辺企業や商店、事業所などの従業員、通行者などがポイントとなる)
店の出店は、いわば魚釣りと同じ。魚影が濃いポイントへ、しかも魚の種類に合った針とエサ、仕掛けで、釣らなければ、魚はかかってくれない。人口ピラミッドは、この魚影ターゲットを表現していると言ってよいだろう。そして、その人口ピラミッドから5年、10年先の年齢別人口比をあぶり出して予測することがポイントである。
マーケティングコンサルタント
戸田 光雄