シリーズ・繁盛店の厨房(10) 右利きと左利き

1993.02.15 22号 17面

《左手は盾で 右手はほこ》 人の内臓はなぜか左右対称になっていない。例えば心臓は左、肝臓は右についている。ボリュームのある肝臓が右側にあるため、重心が右に片寄り、右の手足が発達した。そのため右利きの人が大勢をしめるようになったと言う説はいささか怪しい。

それよりも、左にある心臓を守るために、右手利きが多くなったのだと言う俗説の方が、説得力があるように思う。

この場合の左手は、心臓を守る盾(たて)で、右手の利き腕は矛(ほこ)の役割をする。このほうが攻撃にも適した行動をとり易い。

そこで、常に心臓を安全な位置を保つため、無意識のうちに、心臓のある左側が無防備になることを避けようとする習性が身につき、自然に左サイドがいつも山手側か、壁面などになるような行動をすることになる。

したがって、強い者(男)は弱い者(女)の右側に立って誘導するのが、エチケットとされている。このことから見る限り、左側通行と言うのが理にかなっていることになる。

要約すれば、生物学的な理由はともかく、神は人間の一番大切な心臓を守り易くするために、右利きを順手とした。よって人は無意識であるが、心臓のある左側を軸とした行動をすると言う仮説が成立する。

《左回りに身 体をよじる》 それでは次に、事例に基づいて、反射的というくらいの左ひねり(反時計回り)の人体習性について検討してみよう。

①陸上トラック競技はすべて左回り

②スケート・バレエのスピンは左回り

③刀を差した武士は左側通行が作法

④駅の改札は右手でキップを左手に歩く

⑤映画館の見易く落ち着けるのは左席

⑥人が目標に向かって歩くとやや左蛇行

⑦前面の敵の攻撃は右手で左回し打ち

⑧手回しの石うすは右手による左回し

⑨赤ちゃんは左手で抱き、左顔であやす

⑩若い男女のウインクは左目がほとんど

⑪能面づくりは左美顔が常道

⑫筋電図測定は左顔面が敏感である

⑬古代エジプトの彫刻も女が左、男が右

⑭左顔の美人が断然多い(写真写り)

⑮社交ダンスは左回りをナチュラルターン

と言う。

調理作業の場合、右手に菜箸を、左手にフライパンを持ち、左回りに身体をよじって盛り付けするのが自然である。

また、食器洗いの場合でも、右手で受けて左手に洗い上げるのが順手である。

カフェテリアの場合、レーンに向かって左手方向に横歩きしながら、左手でトレーをすべらせ、右手で好みの料理をとり、左手方向に進行するのを標準としている。

これらの事例から見ると、人はみんな左回りに動作するのが自然で、本来的に備わった運動の基本であると言えまいか?

《厨房コンサルタント 島田 稔 》

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