絶対失敗しないための立地戦略(3) まず自分の足でデータを稼げ

1992.11.02 15号 11面

《確信できる経営理念を持とう》 立地戦略を成功させるためには“けもの道”に罠を仕掛け、客を生捕ることが必要‐‐と先号では申し上げたが、その前に最も大切なことは、経営者自身の店舗に対する経営理念というか、フィロソフィー(哲学)である。

この基本理念が確立されていないかぎり、自分が捜している“けもの道”が定まらず、まるで見当はずれの罠ばかり仕掛け、ムダあがきの末、失敗することになる。つまり、自分は、こうこうこうした基本哲学(信念)に基づき、こういった業種、業態の店を、この年齢層にセグメントして出店したい‐‐という経営フィロソフィーを持つこと、確立することが、立地戦略のまず第一歩、基本中の基本である。

これが明確でないと、いつまで時間をかけても立地はさだまらないばかりか、予算も、人材も、アトモスフィアまで含めて、まさに不明確で、業者(不動産屋、設計家、内装業者等)に振りまわされることになる。

この業界に携わるようになって以来、四半世紀の間に千人単位の経営者に出会ったことになるが、大成功している人は、必ず独特の、人を寄せつけて止まない経営フィロソフィーを持つていた。オーラにも近い魅力あるものだ。

ところが、現実の経営者の大半は、残念ながら、このフィロソフィーが確立されていないのが現状。オーラまでとはいかないが、自分で確信していい切れる基本経営理念ぐらいは持っていて欲しい。

まして昨今の外食産業界は、かつての大繁栄時代から熟成の時代へとクラッチが切り替えられ、構造変化の波にさらわれている。ユーザーの趣向の多様化、生活スタイルの変化、人口構造の変革、都市化と人口の郊外移動、共働きの増加、余暇の増大、さらには、食の個食化、二四時間化、簡便化……など、外食産業はまさに従来の物差でははかりきれない時だけに、この基本フィロソフィーが最も重要になってくるのである。

立地戦略は、ミクロももちろん必要だが、商圏をマクロ的視野から捉えることも極めて重要である。軍隊用語でいえば、「戦略」と「戦術」の使い分け‐‐といえばご理解いただけようか……。

《20項目の基本調査事項とは?》 絶対失敗しないための立地戦略は、オーナーがこうした基本フィロソフィーを持っていることが必須条件といえるが、それでは、具体的には、失敗しないための“立地選定”のためにはどんな作業が必要かといえば‐‐それは、マクロとミクロの足で稼ぐデーターの積み重ねともいえる「立地マーケティング調査」なのである。大きくその調査項目を掲げてみると……。

①商勢力‐商勢力特性とバランス

②商圏、商勢圏分析‐どこまでが商圏か……。

③人口特性‐エリア内人口の増加率、人口密度、年齢別特性、昼・夜間人口、将来予測人口、性別人口特性他

④クラス特性‐収入状況、居住実態、学歴特性、その他

⑤業種・業態分布と特性‐周辺店全店調査分類、分析、特性の把握

⑥街の形成過程‐歴史・拡がり方向

⑦街の発展状況‐現状と未来予測

⑧消費性向と変化‐消費者の消費特性

⑨企業特性

⑩就業人口特性

⑪交通機関‐客運送力動向実態・新設計画

⑫流動人口特性‐人と車の流動量調査、時間帯別の数量と方向、性別、年齢別等

⑬地域集積度‐界隈・空間

⑭周辺ビル情報‐商業用テナントビル及び賃貸マンション情報、新ビル計画

⑮客層実態分析‐来街目的、回数等

⑯街のイメージ調査・分析

⑰ゾーニング分析‐街の機能別ゾーン分析

⑱テナントミックス

⑲マーケティングマップ

⑳関連情報調査

‐‐以上二〇項目が立地戦略のためのマーケティング調査の基本調査項目である。

マーケティング・コンサルタント 戸 田 光 雄 (㈱タック代表取締役)

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