弁当4社の市場開拓戦略 グローバルフーズ「いろは亭」 落ち込みを特注でカバー
「いろは亭」は今年1月現在、直営一四店、FC八四店の計九八店をチェーン化している。経営母体は㈱グローバルフーズ(本社‐東京・渋谷、資本金一〇〇〇万円、代表取締役社長井上文雄氏)。会社設立は昭和55年12月であるが、弁当ショップの開業は同53年で三軒茶屋でスタートしている。
元祖弁当チェーンの「ほっかほっか亭」(創業昭和51年6月)に二年遅れての弁当市場参入であったが、すでにチェーン展開を進めてきて一六年、この間に多くの弁当チェーンが登場、市場は大きく様変わっている。
「弁当ショップはすでに乱立気味ですから、個性を打ち出していかないと、独自の市場を創造していくことはできません。他チェーンとどう差別化していくか、どう店舗をオペレーションしていくか、また、その前提として物件の取得も大きな課題です。しかし、いい物件、いい立地条件となるとそれだけ投資も大きくなるわけです。これをどうクリアしていくか、これからの弁当ビジネスは、いわば場所取りの時代でもあるわけですが、一方においては弁当ビジネスにこだわらずに、他の業態を展開していくことも考えておりまして、すでに天丼の店も出店しているのです。(㈱グローバルフーズ井上雄文社長)。
弁当ビジネスの展開は、競争の激化や市場環境の変化によって、それほどうま味がなくなったという認識である。まず、最大のネックは出店コストに金がかかり過ぎるということである。
例えば、八九年10月、JR田町駅近くに出店した三田店は、ビル一階での開業であるが、店舗面積二五坪と弁当ショップにしては大きな店であるが、入居、内装設備費含めて一億円という投資内容になっている。
内装設備費は坪当たり六~七〇万円といったところなので、二〇〇〇万円以下に収まっているのであるが、入居費が坪当たり三〇〇万円前後はする。家賃が六〇万円、坪二万五〇〇〇円の計算である。
かつて、テイクアウトビジネスは“脱サラビジネス”といわれたものだったが、この投資額では個人レベルでの事業ではなくなっている。
つまり、リスクが大きいということである。確実に売上げが確保できる店であればいいが、それでも店の償却には七、八年はかかる。それに、飲食は施設が汚れるので、適切な物件があっても容易には貸さないというケースも少なくない。
もっとも、この三田店の場合は、本部直営の店舗で、標準店に比べて約二・五倍ものスケールであるし、また、店舗デザインにしても、ハンバーガーショップなどのファーストフードショップをイメージした新しいスタイルを試みたほか、弁当の特注などケータリング機能を持たしたニュータイプの店舗である。
メニューは幕の内弁当四八〇円、同特製弁当六五〇円、いろは幕の内弁当八〇〇円、ステーキ弁当六九〇円、エビフライ弁当六五〇円、うなぎ弁当六五〇円、ヒレカツ弁当六七〇円、とんかつ弁当六〇〇円、チキンカツ弁当四七〇円、ハンバーグ弁当五〇〇円など、定番のメーンメニューを二五種ほどをラインアップしているほか、サラダ、煮物など単品惣菜メニューも多く付加している。
平均単価八〇〇円。現在、月商一二〇〇~一三〇〇万円のレベルを維持しているが、バブル経済がハジケて売上げがいく分ダウンしている面もあるが、あらかじめ価格をアップしていたこともあって、ペイラインは維持している。
「主婦層の利用が減少しましたね。やはり、不景気なので外でモノを買うのをやめようという心理が働くせいでしょうか、敏感に反応している面があります。トータル的にみれば一五%ものがダウンなんですが、落ち込みの分は特注(ケータリング)機能の強化でカバーしていく考えでおります」(井上社長)。
特注は五個以上のオーダーで受けることになっているが、多いときには催しものなどで、一挙に一五〇~二〇〇食というケースもあり、店の営業効率を高めるには重要な機能を担っているのである。
店の営業効率といえば、調理とオーダータイムの短縮というオペレーション的なことに加えて、立地的にもそういうバラつきがなく、朝、昼、夜とフルタイム客の吸引が可能という場所での出店を積極化している。基本的にはオフィス街だが、商業施設が点在し、休日でも人の来街が期待できるところである。
既にこういった考えに立って、三田店に加え、渋谷、広尾、大橋、芝大門などに直営店舗を出店している。このうち、広尾にはテイクアウトを主体として新業態の天丼ショップ「いか天」を出店しており、弁当ショップと並ぶ今後の事業分野としている。
場所は広尾商店街のビルの一、二階。イートインもできる上下三六坪の店舗規模だが、定番メニューは天丼五八〇円、穴子丼九八〇円、エビ特盛九八〇円、かきあげ丼七六〇円(各テイクアウト価格)など。
業態にこだわらず、立地性や地域ニーズを考慮した弾力性のある飲食ビジネスが、これからの生き方としているが、しかし、本体の弁当ビジネスにおいては、スクラップ&ビルドの考え方で、営業効率のよい都心部へと出店を集中していき、リージョナルチェーンとしてのパワーを発揮していく方針にある。
弁当ショップの標準規模は一〇坪で、月商六〇〇万円以上、荒利五二~五五%、純益二〇%という内容であるが、FC加盟を希望する場合は、フランチャイジーに資金的負担をかけないという配慮から、加盟金とロイヤリティーはいっさい徴収していない。