大きな可能性秘めた日本酒 地酒、吟醸造りブームで需要拡大
特級、一級、二級とあった日本酒の等級が平成四年四月一日から完全廃止となった。すなわち、酒の等級によって課税されていた税率が一律になったということである。
酒は造り方や消費者の好みで優劣を決めるべきで、行政が等級を設定するのは不合理という考えがあった。それが撤廃されて、酒質のよしあし、好き嫌いを消費者自身が判断することになった。
つまり、行政上のフレームがなくなって、日本酒の“自由化”がスタートしたということである。成熟社会で飽食時代、消費者はぜいたくになってしまっている。質のよいもの、自己の好みにフィットしていなくては、消費者は満足しないし納得しない。
すべてにおいて消費者主導型のモノ(サービス)社会になっている。このため、行政も税体系よりも消費者ニーズを先行させざるを得ない。とくに、アルコール飲料についてはそういったことがいえる。
それはともあれ、日本酒については五、六年前から地酒ブームが起こり、若い人たちにも積極的に飲まれるようになってきた。日本酒は“民族の酒”といわれながらも、若い人たちには敬遠されてきたが、その多様な飲み方が見直されて、今ではビールに次いで多く飲まれるようになってきている。
日本酒はそのままでも飲めるし、かんをしても冷たくしても飲める。これは他のアルコールにはない特質で、消費者の好みや気分によって、幅広く個性的な飲み方ができる。
それに造り方においても、蔵元の精神、伝統、業があり、酒そのもののキャラクターも広く拡がる。酒は米、水、麹、業の四拍子が揃っていないと、質のよいものが造れないという。そういう意味においては極めてデリケートなアルコールなのであるが、飲む側の消費者は意外にもそれを理解していない。
質のよい酒は歴史を語り、文化を伝える。そして、精神を高めてくれる。いま、日本酒の世界は「吟醸造ブーム」だという。吟醸酒はたしかに上質の酒ではあるが、日本酒は吟醸造ばかりではない。
地酒であるなら、蔵元独自の造り方、地域の特性があり、様々な個性が存在する。それにどうアプローチし、どう飲むか。消費者一人一人の自覚も必要であるが、それ以上に売り方も問われてくる。うまい酒に、うまい料理。そして、上手な提供の仕方。アルコール飲料の中でも、日本酒は大きな可能性を秘めている。