シェフと60分 タカノフルーツパーラー・チーフ 平野泰三氏 オレゴンの果実に感動

1992.09.07 11号 9面

東京・新宿のタカノフルーツパーラーのパーラー営業部チーフ。同店五階でフルーツ、サラダのバイキング料理に腕を振るう。

「当店のバイキングの特徴はフルーツ、サラダをそれぞれ二〇アイテム揃えていること。それに手作りのケーキをメニューにしていることだ」と平野さんは他店との差別化を強調する。PM5時以降はパスタ料理も提供、さらにアルコール類を飲み放題にしている。単品料理と比べて粗利が低いのが頭の痛いところだが、素材の質を落とすわけにはいかない。「寿司屋と同じで、旬のネタをおいしい状態でお客さんに提供することにつきる」とプロの心意気。渡米、一年間オレゴン州に滞在したが、彼地でフルーツの豊饒さに感動してしまった。「オレゴン州はアメリカンチェリーの産地として有名だが、他のフルーツも豊かで、その魅力に引きつけられてフルーツの世界に飛び込んだ」という。帰国後、調理師専門学校で栄養学など基礎的な勉強をしたあとタカノフルーツパーラーに入社した。

この一〇年間、同店で腕を振るう一方、新しいフルーツ料理を吸収するため精力的に海外に出かける。タイの王宮料理のメニューとして有名なフルーツカービングを修得するため、寸暇をみつけてタイに何度も出かけるほど研究熱心。今、わが国でフルーツカービングの第一人者と称されている。小学生向けの料理の教科書に顔を出す一方、主婦を対象にしたフルーツカービング教室にも応じる。気さくで、大らかな人柄が人間関係のパイプを太くしているようだ。

フルーツに取り憑かれている平野さん、これからどんなメニューを作ってくれるか期待も大きい。

自ら“フルーツアーチスト”と称するほど、この道への思いいれは半端ではない。

「日本のフルーツ料理の世界はまだ未開拓の状況だ。デザートとしてのフルーツの提供のしかたもまだ工夫が必要だし、酒類との組み合わせによるメニュー化も課題のひとつ。これからはデザートとしてだけでなく、料理の素材としてフルーツを研究していきたい」と目を輝やかせる。

〈プロフィル〉1956年東京生まれ、拓殖大学卒業後、米・オレゴン州に一年滞在。そこでフルーツの豊饒さに感動して研究を始める。帰国後、新宿調理師専門学校入学。卒業後、新宿高野に入社。現在タカノフルーツパーラーのパーラー営業部チーフ。フルーツアーチストとして活躍。

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