高度成長する惣菜・デリ 行楽弁当に見るメニューの方向性
去る6月10日、福岡市中央区の「メルパルク福岡」で、九州惣菜協会主催の『行楽弁当研究発表会』が催された。夏・秋の行楽シーズンを前に、食材メーカー、惣菜メーカー、包材メーカー等が集まり、行楽弁当の統一メニューを作ろうというものである。当日は、弁当・オードブル合わせて一五点が発表展示され人気投票が行われた。
弁当は日本独特の食品形態であり、外食文化の原点でもある。それが今日、消費者の食生活の多様化や、CVSの浸透等によって、家庭内外食志向が強くなり、オーディナリーフーズとしての持ち帰り弁当類が台頭してきた。いまやCVSの持ち帰り弁当は、惣菜・デリ市場拡大の牽引車的な存在にまでなっている。
では、従来のアウトドアユースでの弁当はどういう方向にあるのか。行楽地、レジャー施設等での外食施設の充実から、通年でみれば明らかに需要は停滞しているといえよう。
しかし、ある特定のシチュエーションでは、逆に順調な伸びを示している。お花見・行楽弁当や全国各地の駅弁がそれである。“時節がら”“土地がら”をうまく訴求した弁当はいまもなお根強い人気を持っている。
そこで、今回は九州惣菜協会の「行楽弁当研究発表会」に出品された行楽弁当を参考に、改めて弁当のコンセプトについて考えてみたい。
《行楽弁当に求めら れる7つポイント》 アウトドアで食される行楽弁当に求められるコンセプトは大きく次の七つに集約される。
①定番人気メニュー、ヘルシーメニューに加え、ちょっとしたアイデアメニューが必要である。出し巻、サラダ等の具材の工夫。
②冷えてもおいしく感じるように、濃いめの味付けをしておく。スパイスの効いたフライドチキン等の揚げ物や味がよくしみこんだ煮物など。
③長時間持ち歩くので、日持ちする材料やメニューに留意する。
④お酒の肴にもなるようにおかずの数を多くする。ご飯は半分以下にする。
⑤手で食べれるアイテムを多くする。おにぎり、寿司がいい例。また、食べ易く、取り易い大きさに調理する。
⑥行楽気分を盛り上げるためにバラエティーに富んだ色彩のおかずを多く取り入れる。
ご飯類にもふりかけ・そぼろやチャーハン・炊き込みご飯などのおかずの一アイテム的な位置づけが必要。
⑦弁当類も行楽気分を盛り立てる重要なファクターである、豪華さ、おいしさを引き立てる容器が必要である。
《五感に訴えるコ ンセプトが必要》 以上の七つのコンセプトを数多く取り込んだものが、行楽弁当として及第点となる。こうしてみると、本来の弁当とは、「いかに人間の五感に訴える商品であるか」に尽きる。つまり、おいしさの原点とメカニズムが、弁当の中身に求められるわけである。
視覚一色、艷、形などの見た目のおいしさ、新鮮さ。弁当の盛り付けはある種の芸術性が求められる。
聴覚‐‐耳からくるおいしさ。漬物、サラダのレタス、煮物(れんこん)などを食べる時に発する音も重要。
味覚‐‐調味料、香辛料、素材の三つの味のバランスが重要。特に、冷めてもおいしいためには、調味料、香辛料の使い方がカギ。
触覚‐‐歯応え、口当たり、のどごし。有頭えび、いかやきゅうり、れんこんなどのコリコリ、サクサク感や、凍豆腐、煮かぼちゃのヌルヌル感等のバランスが重要。
嗅覚‐‐香りがなければ食品はおいしくないといっても過言ではない。弁当に柑橘系のフルーツ類は欠かせないアイテムといえる。
これらの基本的ポイントをいかにトータル演出するかが重要なわけである。弁当はコンビニエンス性やボリューム感、割安感といったものでは長く売れない。CVSのオーディナリーフーズ化した弁当類でも同様である。食事としてのバランス性と食することのアミューズメント性が凝縮された行楽弁当には、今後の惣菜メニューや惣菜売場のあり方を問う、原点回帰のコンセプトがある。