世界の味 美味探究「タイ」 宮廷料理から生まれる

1992.04.06 1号 20面

シャムという名で知られたタイは、アジアで日本とともに歴史と伝統を誇る独立国である。

面積は日本の約一・四倍、熱帯圏の国で雨期と乾期に分かれ、雨期は六~一〇月、乾期は一一~四月まで。年平均気温は二九度と暑い。米を中心とする農業が主要産業で米産がタイ経済を支えている。

ミラクルライスの栽培も盛んで年四回の収穫がみられる。このほか甘煮、タピオカ、綿花、煙草、たまねぎ生産」、重要な輸出品目となっている。

タイ料理は宮廷料理から生まれた。外敵の侵略もなく、国内の安泰も長く続き、このなかで保守的な宮廷と貴族の間に優雅なしきたりや料理法が誕生。そして広く国民のなかに浸透をみた。そのなかの一つにケンがある。ケンは液体を意味するものであるが、転じてスープ・カレー・ソースなどを使った料理が総称される。ケンスープ、ケンカレーなどとなる。

◇種類豊富なスープ料理

タイスープをみても種類が多く、そして豪華、しかもおいしい。

トムヤムクンは伊勢えびの生が材料で、これに魚汁、コリアンダー、赤唐がらし、ライム汁などを入れたもの。唐辛子がピリッと辛いがライムやコリアンダーなどが調和して暑い国での食欲をひき出してくれる。これに似ているのが、ケントムヤムでえびの代わりに鶏肉が入ったもの。ともにタイの代表スープといえよう。

肉や魚料理も数多いが、名物をあげるとまず肉で、ムー・ワーンとよばれる豚肉の角切りを甘醤油で玉ねぎと一緒に煮込んだもの。

ヌアアロイは牛肉に香草をまぜてフライにし、胡瓜、セロリ、パイナップルなどに添えて食べる。

チキン料理ではガイパット・サーンサハーイとよばれるチキンフライに、もやし、たけのこ、きのこなども揚げて、米粉でつくったものに添えて食べる。

魚関係では、第一にトッドマン・プラー。これは魚肉をすりみにし、チリソースを加え油で揚げたもの。パク・ナム・プリックは魚のフライで、これに野菜サラダなど添えたものでディナーにふさわしい。ホイ・コン・シーシーはあわびにきのこ、ハム、野菜などを肉汁で調理したぜいたくな料理。このほか、伊勢えび、いか、かにを使った料理も多くみられる。

◇タイ独特の三色カレー

数多いタイ料理のなかで特徴のあるのがカレー料理。日常もっとも食べられているのが三種類である。レッドチキンカレー(ケン・フュッド・ガイ)は、ココナッツミルク、レッドカレーヘースト、鶏の胸肉、魚汁が主材料で赤唐辛子がきいてピリッとする。

もっとも辛いのがグリーンカレー(ケンキョワン・クン)である、小さくて辛い緑色の唐辛子を使うので、緑色のカレーである。タイ人は好んで食べるのが暑さを克服するのに適している。イエローカレー(ケン・カリーヌア)はレッドカレーペーストにターメリックを加えて、ココナッツミルクやシナモンを加えたもの。いちばん日本的な味である。このカレー以外に特徴のあるものはミー・グローグである。ビーフンと卵と豚肉、えび、タマリンド、魚ソースなど使った特選料理。タイ風やきそばといえる。

主食である米はカレーなどに添えられるほか、ナシゴレン(焼きめし)が多い。チキン・ビーフ、ポーク、ソーセージ入り、あるいは魚入りなどさまざまで、これらはカオバットとよばれている。鍋料理でカオ・オブ・モーディンと呼ぶものは、チキンやきのこを豚の肝臓と一緒に煮込んだものである。

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