大規模施設の衛生管理 東京ディズニーランド、調理から販売まで一貫体制
O157は昨年約九五〇〇人の患者を出し一三人が死亡と猛威を振るったが、今年も八〇一人の患者を出し三人が既に死亡(7月末現在)している。また、O157と同時に世界的に注意信号を出されているのが、近年急増して今後はもっと増える可能性があるとされているサルモネラ。原因は研究されている最中だ。いずれにしても、食に携わるからには細心の注意を払って危害を回避しなくてはいけない。今、厚生省主導のもとHACCPの導入が急がれているが、新システムだけでは動かない。まずは従来から遵守を義務づけられている食品衛生法に定められている一般衛生管理プログラムが、従業員の一人ひとり、施設の末端まで行き渡っているかを確認することから始まる。今回は全国から多くの人が訪れる「東京ディズニーランド」と「日本武道館」の衛生管理体制を紹介する。
来年4月で一五周年を迎える東京ディズニーランド。運営する(株)オリエンタルランド(千葉県浦安市)は、年間入場者数約一七三七万人(一九九六年実績)に、一人当たり約一・四食を七つのエリアに分かれた直営四九施設で飲食を提供している。飲食関係に従事する従業員はパート・アルバイトなどを含めて約五〇〇〇人。
基本的には各施設の食品衛生責任者が中心になって厨房内の衛生、従業員教育を行うが、これをフォローするのが二一人体制の保健衛生部で、従業員の健康管理や来園者の救護業務も行うが、食品衛生専門スタッフを六人擁している。
同施設の最大の特徴は施設内のセントラルキチン(CK)での加工および直営による運営で調理から販売まで一貫して管理できるところにある。オープン時からアメリカのディズニーランドの指導に基づき、パーク内への飲食物の持ち込み禁止、パーク外への飲食物の持ち出し禁止を厳しく励行している。
「当パークは残菜も含めて廃棄物が少ないといわれる。衛生・安全の管理面、パーク運営上からも持ち込み禁止は効果的な考え方だった」(保健衛生部野口英生部長代理)
CKで加工したスープ、魚肉類、野菜など食材を各レストランに保冷車で配送し、厨房で最終の調理を行う。CKの野菜類は一次加工したものが使われている。食材の納入は食堂部の仕入れ専門部署が立会検収している。
また、そこで食材アイテム約一二〇〇、取引業者数約七〇社と細菌の検査証明証を取っている。数値は食品衛生法および千葉県の基準より厳しく設定している。証明証は材料が替わるたびに一食材に一証明証を取っている。
食品検査室では、各レストランの料理と食材を定期的に採取して菌数検査を行い、業者とのダブルチェックを行っている。専門の検査技師一人が専任している。従業員にはマニュアルの徹底指導をしており、施設にはいるときのコスチューム、髪の毛、帽子、爪の検査と手洗い方法まで指導している。
CKのシステムの中で力を発揮しているのが平成3年に導入したキャップコールドシステムによるクックチルである。スープやソースは均一の味を生産でき、一〇日間保存可能なので(同施設では四日間で回転するように生産調整している)、計画生産できる。ここで注意しているのは、いかに菌が増殖しない温度帯に速やかに冷却するか。温度管理には細心の注意を払っている。
害虫対策は年間スケジュールの中で定期的に行っている。ネズミなどはサニテーションの一環として環境アセスメント業者にモニタリングとカウントを依頼している。
「あたりまえのことを一人残らず全員があたりまえに行う」(同氏)ことを最大の目標にして、飲食部門から「夢の世界」へ誘っている。二〇〇一年には第二テーマパークが完成する予定だが、やはり飲食は直営で一貫した管理体制のもとで行う。