世界のに人気食材 「松の実」老い知らずのスタミナ食、数粒で大きな薬効
松の種類は世界で一〇〇種近くあり、日本にも赤松、黒松、朝鮮松、姫小松、這(はい)松などが自生している。
食用となる松の実は、朝鮮五葉松の種子で最高の品質である。朝鮮五葉松は深山に自生し、日本では中部や四国でも産出するが、韓国、北朝鮮、中国東北地区、シベリア、スペイン、イタリア、メキシコ、南アメリカなどで多く採取されている。
球果(松かさ)が大きく、長さ一〇~一五㎝にもなり、中の種子も一㎝ぐらいで、ほかの松の種にみられるような翼はない。
かたい灰茶色の殻に覆われており、これを割ると、白い果肉が取れる。これが食用となる松の実である。口にすると単純な味の中に意外と脂肪分が強く、歯触りは柔らかく、心持ちべたつくような感じである。
成分では脂肪とタンパク質に優れ、リジン、トリプトファンなど必須脂肪酸が多く、数多いナッツの中でも王者級。このほかにも未知の成長因子が多く含まれている。
樹齢一〇〇〇年を誇る老松も、もとは一粒の松の実にすぎず、そのたくましい生命力と不老長寿に結びついて仙人食視されている。食べ過ぎると鼻血が出るほど精が強く、スタミナ食として愛食者も多くみられる。
中国では松子仁(ソンズーレン)と呼び、延命の仙果として珍重している。脂肪、タンパク、ミネラルに富み五臓を養い、肌を潤し、かたくなりがちな便を柔らかにするとして、老人の理想食視されている。
食べ方もいろいろあり八宝飯には松の実を多用する。まんとうや月餅にはあんとして使われる。松子酪は松の実をすって、氷砂糖を入れ汁粉状にしたもの。消化吸収がよく、病後の人や老人にはよいとされている。
松の実を最も上手に利用しているのは韓国で、精進料理や宮廷料理に数多くみられる。味つけも日本の精進料理よりもはるかに複雑で素晴らしい。
この代表例はチャッチュクと呼ばれるもち米と松の実で作るかゆ。口当たりはさらっとなめらか。酒の前に食べれば胃を傷めず、また美しい肌を作る美容食ともなる。もち米一〇に対し松の実は三の割合で多用する。
ヤックシックは、クリ、クルミ、松の実などを多く入れ、黒砂糖とはちみつで味付けした赤飯風もち米ご飯。上に肉桂と朝鮮人参の粉をかける。身体によい食べ物なので薬食と書かれている。
李王朝時代の上流階級で賞味されたクヂョルパンやシンソンロにも松の実は欠かすことができない。いずれも美しく華やかな宮廷料理の代表メニューである。
松の実は欧米でも人気が高い。イタリア語でピノキオと呼ぶが、有名な童話の主人公の名前に使われ、子どもたちにもよく知られている。酒の肴や製菓原料に使われている。
欧米の松の実はポルトガル松、コロラド松、メキシコ松の種子が原料とされるが、外観や味もよく似ている。
米国ではナッツ類の人気が高く、数多くのヘルスショップやスーパーのヘルスフードコーナーで松の実は販売されている。自然食品として売れ筋の一つとなっている。
中国では、松の実は黒ごまと並び長生・不老の保健食とみている。一部には仙人の霊薬として毎日数粒の常用をすすめ、大きな薬効を期待する。しかし、脂肪が非常に多く酸化が早く、風味の落ちる面もあり冷暗所保存が必要。人気度の高い健康食品と呼べよう。