世界の人気食材 「キャベツ」 薬効たっぷり、優等生野菜
キャベツはアブラナ科に属し、この原産地は南ヨーロッパの海岸地域とみられる。栽培の歴史は非常に古く、紀元前にさかのぼる。今でも野生種が自生している。
キャベツの仲間は非常に多く、結球性のキャベツをはじめとして、非結球のケール、花蕾を食べるカリフラワーやブロッコリー、小さな結球が茎に多数つく芽キャベツ、茎の下部がカブのように肥大するコールラビ、葉の美しい葉ボタンなど皆同類である。
栽培は春まき、夏まき、秋まきに大別され、一般的に寒地では春まき夏栽培が、暖地では夏まき冬栽培が盛んで、その他の地域では秋まき春栽培が行われている。この組み合わせで周年栽培が可能である。
品種は世界的にみれば、極早生から大晩生までさまざま。球の形も丸形、尖形、扁球形などがみられ、ドイツでは尖形が多く、日本では扁球形が主力である。
頭が平らであると箱に詰めやすく、買い物かごにも入りやすく、日本人向けに発展をみた。葉も厚い、薄いがみられ、色も白色、濃色、赤紫色などがあり、ちりめん状もみられ、品種では数百種にのぼる。
生のキャベツを食べると甘みが感じられるが、糖分は平均して五%ぐらい。品種によっても違うが、一般に寒い時期のキャベツのほうが糖分は多く甘い。葉の白い部分にはグルタミン酸などの遊離アミノ酸が含まれているのでうまみもある。この甘みとうまみが生キャベツの特徴といえよう。
女性に人気の高い食べ物にサラダがある。生食が中心となるが、トマト、セロリ、レタス、キュウリなど。これらはビタミン面では落第生で、生キャベツのみが優等生である。ビタミンCで比較すると、一〇〇g当たり、レタス六ミリグラム、セロリ六ミリグラム、トマト二〇ミリグラム、キュウリ一三ミリグラムとなり、キャベツは四四ミリグラムと多いのである。
大きめのキャベツの葉一枚で一日のビタミンCは十分である。またロールキャベツなどにして煮た場合、甘みが一層強くなるのは、含硫化合物が甘味物質に変化するためである。
ドイツ人はキャベツの酢漬けが大好物で、ザワークラウトと呼んでいる。キャベツを千切りにして塩を少々加えて重石を乗せ、涼しいところに三週間ぐらいおいて乳酸発酵させる。ビタミンCはほとんど減らず合理的である。
コールスローはアメリカ人が好む。キャベツの千切りをフレンチドレッシングであえたもので、何でもよく合う。
キャベツは薬効の高い食べ物で、胃潰瘍などに有効といわれるアミノ酸の一種で、ビタミンCを含有する。現在では合成されて特効薬ともなっている。また、野菜の効用のひとつであるカルシウムや鉄も葉菜の中では多いほうである。このほかカリウムが多い。体液の浸透圧を維持するのに大切な役目を果たし、同時に利尿作用もある。食塩を多く取りすぎると体外に排泄する特効もみられる。
キャベツは生食が特によく、刻んで肉や魚に付け合わせにする。このほか油炒め、煮込み料理にも適し、利用範囲の広い野菜である。そして年間を通して食べられ、価格の安い野菜ともいえよう。
戦後急速に消費が伸び人気が高まったが、最近では漸減気味で、ライバルの洋菜が急速に増えたことによる。また、気象の関係で豊凶差が激しく年間を通して価格変動の大きな場合もあり、時に緊急輸入品も出回る。