飲食店成功の知恵(99)繁盛編 二毛作を考えよう
飲食店の経営効率を高める方法のひとつに、二毛作がある。昼と夜と違ったお店にして、昼も夜も売りまくろうというお店づくりである。二毛作とはもともと、一年間に二種類の作物を収穫することだが、ひとつの店舗で二種類のお店をやることから、こう名付けられている。
ただ、こういう形態のお店が登場したのはもうひと昔も前のことになるのだが、まだまだ普及していない。飲食店の経営環境はどんどんシビアになっているというのに、である。しかしこれからは、このテーマにもっと真剣に取り組むべきだと思う。特に、そば・うどん店やカレーショップなど、なかなか夜の売上げを伸ばせない単品商売の小規模店に、考えてほしいテーマである。
例えば、そば・うどん店が夜の時間帯で苦戦しているのは、そば・うどんという商品がもともと軽食のためである。ボリューム感なら量の調整でなんとでもなるが、単品ではどうしてもごちそう感に欠ける。
ごちそう感は、天丼やすしなどと組み合わせたセットメニューによって、ある程度のカバーはできる。しかし、今は豊かな時代である。東京などの大都市では、和・洋・中からエスニックと、食べたいものは何でもそろっている。それらのお店と戦うのは、やはり分が悪いといわざるを得ない。それなら、積極的に二毛作に取り組むべきなのだ。昼だけしか稼げないのでは、テナント出店の場合、家賃の大半はムダになってしまう。
もちろんこれまでも、夜の売上げアップ策としてアルコールに力を入れるそば・うどん店はあった。ただ、その取り組み方が中途半端だったために、思うような効果を上げていないケースが多い。中途半端というのは、商品のことである。
お酒を楽しんでもらうということは、居酒屋になるということだ。そこまで徹底してこそ初めて二毛作といえるのであり、お客に満足してもらえるのである。とはいっても、一般の居酒屋と同じ品ぞろえをすればいいということではない。日本酒にはこだわる必要があるが、つまみはおでんとか焼き鳥など、お酒に合うメーン商品を用意すればそれで十分なのだ。もちろん、そば・うどん店ならではの酒肴を出せるのなら、それに越したことはない。
要は、どうすれば「手軽に、しかも落ち着いてお酒を飲めるお店」になるのかを追求することである。その追求なしに、片手間で居酒屋のまねをしても、本業に勝つことは難しい。
一方、カレーもまたごちそう感に欠けるため、夜がウイークポイントになっているのだが、だからといって、簡単にインド料理店に変身できるわけでもない。しかし、私に言わせれば、何もインド料理店になる必要などはない。夜は居酒屋になればいいのである。「カレーショップの売り物はカレーしかない」、と頭から決めてかかっているから壁にぶつかる。
ただ、当たり前の居酒屋との組み合わせではあまりにミスマッチすぎて、プラスの個性にはならない。それなら、カレー本来のエスニックなイメージを利用して、夜はエスニック居酒屋にすればいい。
そば・うどん店にしろカレーショップにしろ、夜の売上げを上げるにはお酒を売るしかない。しかし、お客はどこでもお酒を飲むわけではない。お酒を楽しめる場所だから飲むのである。その場所がすなわち居酒屋というわけだが、居酒屋なら何でもいいということにはならない。
二毛作で居酒屋に取り組む時に一番大事なことは、「昼の顔」をいかに居酒屋の個性と結びつけるかである。そうすれば、自然と狙う客層も決まってくる。
フードサービスコンサルタントグループ
チーフコンサルタント 宇井 義行