世界の人気食材 「ごま」ただ今満帆 小さな万能選手

1996.08.19 107号 21面

日本で、すりごま、ごま豆腐、ごまドレッシングの売れ行きは好調。欧米でも、ごま入りクッキーやパン、スナックは人気を呼んでいる。世界的なヘルシー志向の高まりで需要は増大し、価格面でも上昇を続けている。

このごまの原産地は、インドともアフリカともいわれているが、正しくは不明。インドでは古くから栽培され、ここから東西に伝えられた。セサミロード(ごまの道)を形成し、世界に広がった食品である。日本には約一〇〇〇年前に中国から僧侶によって移入された。

ごまは、熱帯地区が原産のため寒さに弱く、日本では夏作物で、茨城、埼玉、千葉などで生産されていたが、現在では絶滅に近く、代わって輸入品が急増している。

世界的な生産国はインドをはじめ、スーダン、メキシコ、ミャンマー、中国、ベネズエラ、エチオピア、タイなど。生産量は、豊凶の関係で価格面も大きくゆれている。

ごまの品種は白、黒、黄、褐色などがあるが、日本人の好むのは白ごまと黒ごま。また、地域し好として、関東以北は黒ごま、関西では白ごまが好まれているが、最近では関東にも白ごまの普及がみられる。黒ごまは芳香成分が多く、すりごまには白ごまが、味の良いのは金ごまともいわれている。

ごまの品質の良いものほど味が良く、その見分け方は、粒の揃っていることが第一で、粒が大きくふくらんで、太って見えるものが良品である。また、良品は香りもよく、古くなると香りも失せる。

ごまの特性はどの食品にもよく合い、そして味をよくする。俗説に、「ごまかす」という言葉があるが、この点をいったものである。

成分をみると、油分が五一%、タンパク質一九・八%、糖質一五・三%、繊維三・一%、灰分五・二%など。このほか、カルシウム、鉄、ビタミン〓・〓・Eなどの栄養素が豊富である。

ごま油には、コレステロールの低下に効果の高いリノール酸やオレイン酸が豊富に含まれている。また、タンパク質には、細胞の活性化に役立つ必須アミノ酸が多くみられる。特に、日本人の食生活に不足しているカルシウムと鉄分の多いことも、特性として挙げられよう。

消化の悪い点が唯一の欠点とみられたが、食物繊維の多いことは、便秘解消の妙薬とされ長所となってはやされてきた。

現在日本の輸入量は、年間一四万t前後で、八万tが搾油用、残りが食品用となっている。ごま油は日本料理、韓国料理、中国料理には欠かせない。揚げ油や炒め油として利用。色は大豆油と比べて茶褐色で濃く香りが非常に強い。中国料理に多用される。

ごま油の特徴は精製をしない。ビタミンEも多く、貯蔵中の変化も少ない。酸化が遅く安定しているのは、ごま油特有のセザミンの抗酸化性による。

食品ごまはふりかけ、製菓、製パン、料理用に広く使われている。いりごまは、ほうろくに入れて熱が平均になるように、絶えずかき回し、ごまが三粒はねたら出来上がり。ごま塩には主として黒ごまが利用され、赤飯や幕の内には欠かせない。

最近ではすりごま、ごまあえの素、ごまドレッシング、ごま豆腐など、ごま加工品が消費者の健康志向の高まりで人気をよんでいる。韓国料理でも、ごまやごま油を多用、ベトナムでもごませんべい、ポーランドでもごまキャンデーは売れ筋。アメリカでもよくごまを食べる。ごまは、世界の人気食材だ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら