地域ルポ 東京・渋谷並木橋 熾烈なラーメン、丼戦争

1996.06.03 102号 8面

JR山手線渋谷駅南口。広いバスターミナルの向正面に東急文化会館、南側は国道二四六号線と明治通りがクロスする渋谷警察署前の交差点。JR渋谷駅は一日平均八四万人の乗降者数。JRのほか東急東横線、新玉川線、地下鉄銀座線、半蔵門線の四線が乗り入れており、トータルで一日平均一五〇~一六〇万人以上の乗降者がある。南口は北口の「ハチ公口」に比べ人の流れは少なく、全体の三、四割というウエートだ。しかし、南口でも渋谷警察署前の土・日は人の来街で大賑わいになる。並木橋近接地に中央競馬会の場外馬券売場「ウインズ渋谷」があり、競馬ファンが押しかけるからだ。通常のレースで一日平均四~五万人、ビッグレースで六~七万人ものファンが来街する。この人の流れを見込んで、渋谷警察署前から並木橋辺り約四〇〇mにかけて、ここ二~三年前からどんぶりメニューやラーメンといった和風ファストフード系の出店が活発化、新たな飲食ゾーンを形成している。

渋谷警察署前から並木橋方向へ。片側二車線の明治通り。一〇年くらい前までは低層のビルや飲食店舗が点在する地味な地域だったが、バブル期からビルが建ちだして、現在では一〇階建てクラスのビルが林立する。

これらビルの地下一階や地上一、二階に飲食店舗や物販店が出店しているわけだが、店舗は明治通り東側に多く集積しており、西側は物販、飲食合わせ一〇店前後が点在するのみだ。

飲食店舗ももちろん明治通り西側に展開している。しかし、ビルの後方は古川が南北に流れているので、面としての広がりはなく、通りに沿った線としての狭いエリアの“飲食街”の形成だ。

ドトールコーヒーはその西側、交差点の角地辺りに位置するベストロケーションで、並木橋に向かう飲食ゾーンの顔としての存在だ。

この店は直営店で八四年5月のオープン。ドトールチェーンとしても、地域の飲食チェーンとしても“老舗”という存在だ。

並木橋方向へ三〇mほど。ビル一階に立食スタイルの富士そば、二階にステーキのくいしんぼ。ステーキのくいしんぼFC店で、九三年8月オープン。店舗面積一五坪、客席数三四席。月商六〇〇~七〇〇万円。

そこからさらに二〇mほど並木橋寄り。餃子とラーメンの小次郎、カレー専門店FSココイチ、天丼てんや、餃子・中華そば大穀、博多ラーメンまるきん、会津・喜多方ラーメン小法師と続き、終端の並木橋交差点角地には牛丼チェーンの神戸らんぷ亭が出店する。

渋谷駅南口、国道二四六号線と明治通りがクロスする渋谷警察署前交差点‐‐前方が明治通りで並木橋方面を望む

渋谷警察署前の歩道橋からJR渋谷駅および東急東横線南口(バスターミナル)を見る。手前は国道246号線

カレーショップの「ココイチ」は4月2日オープンのニューフェース。店舗面積一〇坪、「カレーハウスCOCO壱番屋」を展開する(株)壱番屋(本社・一宮市)の直営店で、いわばCOCO壱番屋のジュニア版。

現在二〇店を出店しており、チェーン化を推進中で、本体同様にFCシステムも導入している。メニューはポークカレー三五〇円、ビーフカレー、チーズカレー各四五〇円、カツカレー、ソーセージカレー各五五〇円、イカカレー、コロッケカレー、フライドチキンカレー各五〇〇円の八品目。

これらメニューに加えては別売でトッピング一〇〇~二〇〇円もあり、好みで具を増すことができる。

客層は若いサラリーマンやOL、学生、カップルなど。客単価六〇〇円。テークアウトもおこなっており、平日の昼は全体売上げの五割を占める。

月商六〇〇万円が目標だが、客足好調で十分にクリアできる見通し。営業時間午前10時~午前0時。

中華そばの「大穀」はオープンして三〇年。店舗面積一〇坪、客席はカウンターのみ一五席。鶏と豚ガラでとったダシで、味噌、醤油、塩味の三つのスープ。

メニューは中華麺、味噌、塩麺各六〇〇円、バター麺七〇〇円、ワンタン、メンマ麺各七五〇円、チャーシュー麺八五〇円、餃子(味噌タレ)五〇〇円など一一品目。

メニュー価格六〇〇円は安い。麺は一四〇gとボリュームもある。六年間値上げなし。店主の武内偉郎さんの意気込みだ。

カウンターのキムチは食べ放題、店はお世辞にもキレイとはいえないが、固定客が六割もいて、客数は一日平均二二〇~二三〇人。客単価六〇〇~七〇〇円。日商一四~一五万円というところだ。

営業時間午前11時~翌朝1時。夜は道路沿いにもかかわらず客足は遠ざかる。

博多ラーメン「まるきん」。昨年12月のオープン。それまで長崎チャンポンの店だったが、廃業したので、それに代わっての出店だ。店舗面積一五坪、客席数二六席。

長時間煮込んだとんこつ味が売りで、ネギ、のり、チャーシュー入り基本メニューの博多ラーメンが五〇〇円。麺は自家製の細麺で一人前一二〇g。

メニューはチャーシュー三〇〇円、ネギ入り二〇〇円、煮玉子、のり、タカナ各一〇〇円を選び好みのメニューを作る。ということはメニューは一品だ。

基本ラーメンの貢献度は三〇%、客単価七〇〇~八〇〇円。客数は土・日は平日の三倍。競馬ファンが流れてくるからだ。

月商六〇〇万円。営業時間午前11時~翌朝4時。渋谷店に加え白金、麻布十番、上馬、雪ケ谷、目黒店など計六店を出店している。

会津・喜多方ラーメン「小法師」は九四年10月のオープン。FC店で店舗面積一〇坪、客席数一九席。

喜多方の蔵をイメージした店舗造作で、喜多方ラーメン五五〇円、ネギラーメン六五〇円、焼豚ラーメン七〇〇円、ネギ焼豚ラーメン八五〇円などメニューを絞り込んでいるのが特色だが、これもトッピングを変えるだけで、基本は一品ということだ。

客単価六〇〇~七〇〇円。月商六〇〇万円(推計)。営業時間平日午前11時~午後11時、日・祭日は午後10時まで。

神戸らんぷ亭はスーパーダイエーが展開している外食事業の一つで、この店は二年前にオープンした直営店。店舗面積は二〇坪、客席数二八席。

牛丼並二九〇円、大四〇〇円、得盛六〇〇円。並が全体の七〇%を占め、低価格牛丼の強さをみせている。客単価四四〇円。月商一〇〇〇万円以上。二四時間営業。

天丼チェーン「丼丼亭」も二年前のオープン。店舗面積一〇坪、客席数一五席。この店は明治通り東側、「ウインズ渋谷」入り口右手に位置しており、競馬が開催される土・日に限っていえば好立地にあるといえる。

土・日は平日の三倍の客数。しかし、平日は閑散としているロケーションなだけに、日中は地域のサラリーマンの利用のみにとどまっているという印象だ。

並四九〇円、大盛五五〇円、特得六八〇円。客単価六〇〇円。並はテークアウトを含め全体比六割のウエート。月商六〇〇万円以上。営業時間平日午前10時~午後9時30分、土・日午前9時~午後8時。

〈喫茶〉ドトールコーヒー、アマンド

〈そば・うどん〉富士そば、梅もと

〈ラーメン・餃子〉ラーメン・餃子館小次郎、会津・喜多方ラーメン小法師、博多ラーメンまるきん、大鼓

〈どんぶり〉てんや、めしや丼、丼丼亭、神戸らんぷ亭

〈弁当〉ほっかほっか亭、ランチボックス

〈カレーショップ〉FSココイチ

〈ステーキ〉ステーキのくいしんぼ

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