10年後を見据えた飲食店の課題 専門店の生き残る5条件
ここでこのようなお客様のニーズに対応できる専門店は、必然的に次のような条件を備えていることが重要になる。
■分かりやすいメニュー構成になっている。
■楽しく選べる選択肢がある。
■しかも迷いすぎない程度に、程良く絞り込まれた商品数になっている。
■おいしさ感を全面にアピールする工夫がある(例えばオープンキッチンの厨房など)。
■プロフェッショナルを感じさせる従業員が働いていること。
これらの要素は従来、一般的だったファミリーレストランやファストフードではなかなか実現することができなかったこと。例えばメニュー一つとってみても、お客様の利便性を考えればセットメニューが中心になってしまったり、専門料理を前面に押し出そうとすると分かりづらいメニューになってしまって、勢い「お任せ料理の店」のようになってしまったりと、どうしても作り手本位の店になってしまいがちだった。
専門性につきものだった「分かりにくさ」を排除し、専門性をお客様にアピールする。その相矛盾する工夫を満たす……。例えばこんなふうにしてである。
▲メーン商品(売り物商品)を特定する。
つまりあそこの店に行けば、○○といううまいモノが食べられるから、という特徴を商 品でアピールすること。従来のような、うちは和食の店・イタリア料理の店というよう な、幅広い区分では不十分。○○屋というようなインパクトが必要。
▲楽しさをアピールする商品と、満腹を保証する商品をバランス良く品ぞろえする。
ファミリーレストランなどの業態店は、おなかいっぱいになるものの提供は上手だけれ ども、楽しさに欠ける。一方、従来の高級専門店はおなかいっぱいになるのにお金がか かりすぎる。その双方を上手に取り込むことが差別化の最大のポイント。最近、同じイ タリア料理でも「ピザとパスタ」に特化したレストランがはやっているが、これはピザ という楽しさと、パスタという満腹を保証する商品が共存していて、それぞれが共通の テーマ性でくくられているから、ということができるかも知れない。
▲どんな注文の仕方をしても、あまり客単価が上下しない単価設定を心がける。
従来の自由に注文できる専門店的な店の敷居の高さの一つに「一体、いくらになるのか 分からない」メニュー設定があった。食べたいモノを頼んで結果、三〇〇〇円になるこ ともあれば五〇〇〇円かかってしまうコトもある店で、お客様は安心して注文すること ができなくなる。特に、自分たちは二〇〇〇円程度の食事をしているのに、隣でワイン をドンドン抜いて一万円近い食事をしていそうな、そんな場所で気持ちの良い食事がで きるはずがない。「うちの店ではいくらで満足してもらおう」という明確な意思を持っ て、商品構成をすることが極めて重要だろう。
こういうふうに考えていくと、今まで一般的に考えられていた「いわゆる専門店」と、これからお客様の支持を受けるであろう「これからの専門店」の間には、微妙だけれども大きな差があることが分かっていただけると思う。