中国料理に新潮流 “ヌーベル・シノワ”店紹介 トゥーランドット游仙境
「パンパシフィックホテル横浜」のメーンダイニング「トゥーランドット游仙境」は、上海料理界のホープ脇屋友詞氏が指揮するヌーベル・シノワの中国料理店。フレンチレストラン「クイーンアリス」のオーナーシェフ石鍋裕氏プロデュースのもとオープンした東京・麻布の一号店に続く二号店として昨年8月オープンした。少人数ニーズに応える少量多種類の小皿コース料理と、オペラ劇場をイメージしたエレガントな内装が注目され、オープン以来客層の九割以上が女性という状況。二〇〇坪・二五〇席で月商六五〇〇万円、ホテルの宴会受注を含めると九〇〇〇万円~一億円と好調に展開している。
「トゥーランドット」の店名は、中国の紫禁城を舞台にしたプッチーニのオペラに登場するヒロインの“トゥーランドット姫”からとったもの。石鍋氏が、働く気力、頑張る意欲がわいてくるような空間づくりを目的に、文化性、芸術性、時代性などさまざまな観点から検討を重ね、夢を見られる食卓としてプロデュースした。
それを料理という形で具体化したのが総料理長の脇屋友詞氏。中国料理の伝統をベースに斬新な発想を加え、繊細で感性豊かな小皿コース料理を創造している。数々の小皿にのった前菜に始まり、フカヒレスープ、上海料理ならではのコクのある煮込み、スパイシーな野菜料理、そして豊富なデザート。器は香港のリッチマンの食卓風にアレンジしている。
「和・洋・中さまざまな食材を扱い中国料理の技法で仕上げています。メーンディッシュを肉や魚に固執することなく、食材一品一品のおいしさを味わっていただきたい。従来はつけ合わせのイメージだった素材も肉や魚に匹敵するおいしさが出せる。そのための小皿コース料理なのです」と脇屋総料理長。
二号店の「トゥーランドット游仙境」は、横浜市のみなとみらい地区に立地する。中華街や他大手ホテルが隣接する立地だけに、従来通りの中国料理店では展開に難をきたすところだ。しかし、小皿コース料理と原色基調から脱皮した華麗な内装が受けて、地域注目の一番店と化している。
同店の小皿コースは昼夜ともに七五〇〇円、一万円、一万五〇〇〇円の三コース(八品)。ランチセットが三五〇〇円(六品)。それに一品料理と宴会大皿料理がラインアップする。ドリンク類については、西洋風コンセプトと女性客の圧倒的支持を受けワインがオーダー構成比の四割強にも達する模様。
このほどトゥーランドットの三号店が東京・赤坂のアークヒルズにオープンした。とびきりの素材を使った本当においしい料理を、洗練された雰囲気のなか少量多種類味わうヌーベル・シノワ。トゥーランドットにおける伝統を守りながらの創造料理は、今後の中国料理の潮流として、さらに注目度を高めそうだ。
◆トゥーランドット游仙境/横浜市西区みなとみらい二-三-七、パンパシフィックホテル、電話045・682・0361/開業・平成9年9月/坪数席数・二五〇坪一八〇席/営業時間・ランチ午前11時30分~午後2時30分(ラストオーダー)、ディナー午後5時30分~9時(ラストオーダー)、年中無休/客単価・七五〇〇~八〇〇〇円/一日来店客数・平日二五〇~三〇〇人/年商・一二億円/客層・圧倒的に女性客で占められる/従業員数・キッチン社員二五人、アルバイト三人、ホール社員二五人、アルバイト一〇人
◆料理長・脇屋友詞氏=昭和33年、北海道・札幌生まれ。三九歳。父親に身柄を預けられた「山王飯店」で鍋洗いに明け暮れた後、「楼蘭」に移り宴会料理を修得。さらに東武、ヒルトン、キャピトル東急、リーセントパークなどのホテルで大組織におけるシェフの経験を経て、昨年から現職に就く。かつての豊富な経験を生かし、伝統的中国料理を踏まえながら従来の枠を超えた「脇屋流チャイニーズ」を展開する。
■「款冬糯米飯」(干し貝柱とブラックペッパー風味ごはん春の香り添え)
もち米を蒸し、塩、もどした干し貝柱、ブラックペッパーの調味料で味をつけ、セルクルで型を調える。フキノトウをカリッと揚げ、コゴミは、翡翠の麺をつけ揚げ、ご飯の上に盛る。
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■「翡翠蛤蜊湯」(地ハマグリの翡翠茶碗蒸しスープ)
ガラスープにハマグリの身と出汁を入れ、六分ぐらい火が通ったら取り出し、スープに塩、コショウで味を調えておく。春菊とスープで翡翠スープを作り、ホイップした卵、ハマグリを合わせ、茶碗蒸しを作る。
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■「秘醤煎腓〓」(特選松坂牛の秘醤ソース)
白菜の芯を低めの油で揚げ、しんなりしたら塩味スープで煮る。フキノトウに翡翠の麺をつけ揚げる。牛肉を焼く。粒ブラックペッパー、ニンニクみじんを炒め香り付けしたソースを水溶き片栗粉でとめ、生クリームをたらし、肉にかける。
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■「春告五彩〓」(春を告げる色とりどりの前菜小皿盛り)
「糖醋排骨」(黒豚の甘酢煮)、「皮蛋豆腐」(台湾産ピータンと絹豆腐のハーモニー)、「鮮鮑香蒸」(活アワビの香り蒸しチシャトウの干貝和え)、「腐皮捲く蝦」(活捲蝦と生湯葉のピリカラ風味揚げ)、「凉拌〓絲」(モンゴウイカとセロリのナンプラー和え)
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■「乾煎鮮帯魚」(太刀魚の香り揚げ)
太刀魚を二㎝幅の棒状に切り、老酒、塩、ネギ、ショウガなどで作ったたれに漬け、油で揚げる。春巻きの皮を好みの形に揚げる。ネギを焦げ目がつくほど炒め、太刀魚を入れてあおり、塩少々を入れ、春巻きを皿に敷き、太刀魚とネギをのせ、サンショウ粉を散らす。
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■「冬筍〓牡蛎」(カリカリ野菜と活ガキのスパイシーソース煎り焼き)
冬筍を薄塩味のガラスープで煮、高温でレンコン、ゴボウとともに素揚げする。スナップビーンズ、パプリカをサッとボイルし、生ガキに粉をまぶしてキツネ色に焼く。香菜を弱火で炒めておく。ソースは、老酒、ガラスープ、塩、砂糖、オイスターソースを入れ味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつけ、仕上げにネギ油、ごま油をたらし、香菜を入れる。すべてを盛り、ソースをかける。