うまいぞ!地の野菜(3)静岡県現地ルポおもしろ野菜発見「食用ホオズキ」

1998.04.06 149号 12面

「ホオズキは観賞用と思っている人が多いんですね。意外に甘くてかすかな酸味のある食用ホオズキは、珍しさと懐かしさもあるんでしょうか、なかなかの評判なんですよ」と満面笑みの黒田秀子さんと沢崎富子さん。

静岡県小笠郡菊川町の農家の主婦二人が、食用ホオズキ栽培に取り組んだのは二年前。

「たまたま譲り受けたビニールハウスがあり、農協からの勧めもあって遊び心でやってみようと思いたったんです」

最初は発芽能力のない種を植えたりの失敗もあったが、一昨年は北海道から種を入手、5月に種まきし二三本で実験的に栽培をしたところ、11月から4月までの間で約七〇ケース(一ケース一〇〇個)を収穫した。

二人の手のひらにのせたホオズキは、小振りで観賞用と同じちょうちん型、色は淡いピンクを帯びた枯れ草色。袋の中は黄色のかわいい実がついている。

希少性から東京・築地市場やホテル・レストランなどからの引き合いもあり、「収穫は、まだ二回目なので試行錯誤ですが、こんなに反響があると途中で投げ出せなくなりました」とうれしい悲鳴をあげる。

食用ホオズキは、グズベリーの一種でナス科の植物、原産地は南米のペルー、今ではフランス、ドイツが主な産地。日本では北海道、愛知県、群馬県で栽培されているが数的にはまだまだ少ない。静岡県では菊川町が唯一の産地である。

「知名度はいまひとつ。少しでも多くの人に食用ホオズキの存在を知ってもらいたい」からと、静岡市の「食の祭典」や法多山尊永寺での「厄除けほおずき市」にフレッシュとともにホオズキアイスを引っさげて乗り込む。

また、地元の掛川市でも積極的に宣伝活動をし、観光物産センターの「こだわりっぱ」や新幹線駅売店の「これしか処」などでアイスクリームに加工して売り出す。

「半信半疑で手に取っていた人が、食べてみて味が気に入り、だんだん名前も知られるようになりました。わざわざ名指しで買いに来る人もいます」

だんだん自信もつき、昨年は苗木を約一〇〇本に増植、三棟のハウスで栽培するまでになった。

六〇坪、約一〇〇本の食用ホオズキがずらりと並んだハウス内は、甘い香りでむせかえっている。一見トマト栽培かと思わせる茎と枝振りだ。種をまき一年もので高さ一八〇㎝、茎の太さ三㎝、一本で約三〇〇個の実をつける。

「雨が降れば茶畑は休みで休養をとっていたのが、今はホオズキの世話で休む暇もありません」と苦笑する二人。

「以前のままだったら愚痴を言うだけに終わったかもしれないが、今ではホオズキを通して人の輪が広がっていくのが楽しみです」

農家の主婦二人が見つけた新しい道。試行錯誤の毎日だが、今年は収穫時期をずらすことにも挑戦する。

■生産者名=黒田秀子・沢崎富子(静岡県小笠郡菊 川町西方五三五七、電話0537・ 36・4128、FAX0537・35・3578)

■販売方法=東京・築地市場と宅配。JA遠州夢咲(静岡県小笠郡小笠町下平川五二八〇、電話0537・73・5111、FAX0537・73・6914)への申し込みも可能。

■価格=一㎏(約一〇〇個)二〇〇〇円。最少注文単位は一㎏から。送料は着払い。

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