HACCP飲食店衛生のAからZまで(3)日本の飲食店の実行状況
開発の動機は宇宙食の生産
HACCPシステムは、大変に難しい食品衛生学のレベルである。著者は居酒屋、レストラン、給食産業、病院などの講演時には、このHACCPシステムは食品衛生学の大学院レベルであると一言で説明する。なぜなら、一九六〇年代のアメリカが、宇宙食を生産するために開発した「食の安全確保システム」だからである。開発から約三〇年以上も経過している。一九九八年の日本人のライフ・スタイルと、時代の背景が大きく違う。そのため、HACCPシステムは、これでもか、これでもか、と石橋を叩いているような感を覚える。
このようなことは、著者が感じるだけではあるまい。こんなに難しいHACCPシステムを導入できる中小企業はない。最初に、理解できない? でも、HACCPシステムは、システムとして素晴らしい。日本において、利用しない手はない。食品衛生に関連している人間ならだれもが思うはずである。
このテーマで、世の中を見回してみると、HACCPに関連する書籍やセミナーなどの類は、すべて専門家か、準専門家を相手にしているようである。やさしいHACCPシステムの導入に貢献しているのは、一体どこだろう。
それは、社団法人集団給食協会の「絵でみる衛生自主管理マニュアル」、厚生省の「改訂大量調理施設、衛生管理のポイント」、著者の「厨房のウラ側チェック」(日本食糧新聞社)などの教材がある程度で、これでは、HACCPをやさしく教える人も大変である。特に、飲食店の現場では教えずらい。まず教えても実行できない? やらない?
また、教える側でも、飲食店の各種業態とその厨房の状態、あるいは飲食店の経営などを把握してない連中が、教えるにはおのずと限界があるだろう。では、大手の飲食店はHACCPシステムを採用しているのか。これも大学院レベルのHACCPでは、大手といえども実行には無理がある。なにせ、経営資源の人がパートやアルバイトに六〇%程度偏っているのに、難しい食品衛生などは、実行に困難が伴う。
経営効率、株価にも好影響
新聞発表と実行の中身は、大きくかけ離れているものだ。まず、関係以外の人々には視察が許されない。食品衛生という大義名分の錦の御旗がある。そこで、結論を言えば、食品衛生の潮流はHACCPシステムだが、現実はまだまだ大手といえども黎明期である。ましてや、中小企業の飲食店は、HACCP以前のPPやGMPまでも程遠い状況にある。だからこそ、著者は言いたい。まず、一歩踏み出すことである。
企業は、HACCPシステムを実行に移すことにより経営効率も、株価も、従業員教育も、あらゆる所に好影響を与えるシステム的思考法であると。これは踏み出した経営者しかわからないことである。これを知行合一という。そのCCPは、教育を目的に添って遂行できる先生を選択することである。
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(4面につづく)