ヒット食材パワーの徹底研究:エバラ食品工業「札幌ラーメンの素みそスープ」

1998.12.07 167号 14面

外食市場の活性化に貢献した業務用加工食品の功績を記念表彰する「業務用加工食品ヒット賞」は、本紙創刊五周年を契機に各関係団体協力のもと創設された。これまでに「和食」「洋食」「中華」「給食」の四部門で計二四製品が受賞に輝いている。これらの製品は、昨今の消費低迷のなかでも元気いっぱいだ。ではヒットの要因は何なのか。このシリーズでは、受賞ヒット製品の開発コンセプトと成功要因を徹底検証する。今回は、中華部門で受賞した「札幌ラーメンの素 みそスープ」(エバラ食品工業(株))。

ラーメン専門店で「味噌ラーメン」は全国どこにいっても“定番メニュー”に位置づけられるが、発祥の地は札幌。その札幌で誕生した味噌ラーメンに着目して全国に普及を図ったのがエバラ食品工業だ。

同社が設立されたのは昭和33年、ソース、ケチャップ類の生産を手がけ、40年から、がらスープ類の生産を開始し、ラーメンスープ周辺商品の開発体制を整えていった。

そして43年、札幌で味噌ラーメンが人気になったのに着目し、関東地区への味噌ラーメンの浸透に注力した。文字通り「中華鍋」を持って街のラーメン店に味噌ラーメンを伝授したのである。

味噌ベースは赤味噌を使用し、ニンニク、スパイスを控えめにしたのが大きな特徴。くせがないようにし、味の完成度を七〇%にしているのがポイントだ。ユーザーであるラーメン店が好みの味付けにできるように完成度をあえて落としている。

40年代前半のラーメン店では味噌ラーメンを調理する際、中華鍋で野菜をあおってからスープと味噌を合わせる、という方法が一般的なオペレーションだった。店の特徴を引き出させるため、エバラ食品工業では、みそスープの味付けを抑えめにしたわけである。

ラーメンスープでパイオニアのエバラ食品工業の強みは、ラーメンの周辺商品を独自の技術と開発力によってラインアップしていることだ。同社の業務向けラーメンスープ類は実に三〇アイテムにも及び、みそラーメンスープだけでも四アイテムそろっている。同社の総売上げ四〇〇億円のうち、ラーメンまわりの商品構成は二五%にも達している。

市場(ラーメン専門店)の動きはこの五~六年で味噌系がやや減少し、豚骨系が主流になっている。はやりすたりのサイクルが、現在では半年の周期になっているラーメン業界のめまぐるしい動きのなかで、エバラ食品工業は周辺商品を連動させた対応で着実に業容を拡大している。

ラーメン店の調理オペレーションの変化に応じた商品開発に磨きをかけている。かつて中華鍋をあおって作った味噌ラーメンは、そのオペレーションが変わり、味噌ベースを器(ラーメン丼)に入れてスープでのばすだけ、という簡単な調理になっている。

このため、エバラ食品工業では“金ラベル”の札幌みそラーメンの素スープを開発(59年)、数種類の味噌に高級調味料を加え、さらに荒びきの玉ネギ、ニンニクをミックスしたコクのある手づくり仕上げの完成度がきわめて高い商品を作り上げている。

中華の一流シェフは「エバラ食品工業さんのみそラーメンのスープは素晴らしい。料理人不要なほど完成度が高い」と称賛する。

ラーメンチェーン店では、他店との差別化を図るためスープメーカーに特注(仕様書発注)するケースが増えているが、エバラ食品工業でもその要望が高まっているという。周辺商品をそろえて需要創造型の営業体制を敷いている。研究所の出身者が営業活動しているのも大きな強みだ。

◆エバラ食品工業(株)(神奈川県横浜市西区北幸二‐五‐一五、Tel045・314・0121)昭和33年資本金五〇万円で荏原食品(株)を設立、40年に資本金二〇〇万円に増資、スープ類生産開始。43年4月、札幌ラーメンの素(みそスープ)、マドラスカレー、がらスープ、ラーメンスープなどを発売、同年7月、資本金五〇〇万円に増資し、商号をエバラ食品工業(株)に変更。

“エバラならでは”といわれるオリジナリティーを発揮するのが社のモットー。ラーメンスープの開発・普及で経営の基盤をつくり、その後、焼肉のたれ、浅漬けの素など、新たな需要を創出する商品開発を展開している。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: エバラ食品工業