新店ウォッチング:ラーメン「とん太」幕張店

1998.12.07 167号 4面

ラーメン専門店のフランチャイズチェーン大手、秀穂が展開するラーメン「とん太」の四〇〇号店が、今回紹介する幕張店である。

同店は、首都圏と千葉を結ぶ主要幹線国道のひとつ国道一四号線に面した、いわゆるロードサイド型の典型であり、駐車場も十分に確保され、オープンからまだ三ヵ月に満たない店舗ではあるが、月商も一五〇〇万円前後で推移しており、同社でもトップクラスの好業績店舗となっている。

同店はFC店舗ではなく秀穂社の直営店だが、四〇〇号店というキリのいい番号の店舗というだけではなく、新しい省力化機器をフルラインで装備した、新型の標準店舗としての一号店という位置づけでもある。

この省力化機器の目玉は、全自動ゆで麺機と全自動スープウォーマーだ。

独自ノウハウ随所に生かす

ゆで麺機は、ザルの上げ下ろしを自動化し、麺の種類によってゆで時間を設定できるようになっており、また、ザルのひとつひとつに独自のノウハウによる「落とし蓋」が組み込まれていることで、麺のゆで上がりが均一になる工夫も施されている。

全自動スープウォーマーは、さらに画期的なシステムで、四〇リットルの容量を持つ電気式のウォーマーに自動計量できるディスペンサーが付いたものだ。スープの量は一〇ccから四二〇ccまでの範囲で二種類設定でき、丼を所定の場所に置いてボタンを押すだけで、一定量のスープが注がれる。

どちらの機器も、きめ細やかな温度設定を可能にするために、ガスではなく電気ヒーターにより加熱を行っており、温度設定はもちろん自動制御である。

人件費率でも大幅削減達成

同店は、これまで同社が開発してきた、このような省力化機器をフルラインで装備したことで、六三席という比較的大型の店でありながら、人件費率が従来の二五%から五ポイントも削減できたという。

商品としては「みそ」や「とんこつ」といった定番のほか、新商品の「スペシャルとん太」など、とん太が得意とする「コッテリ味」系の商品が主力であり、店ごとにトッピングと価格を設定している「ご当地ラーメン」も「幕張ラーメン」の名でラインアップされている。

同社は、11月にはチェーン専門店として初めて山陽自動車道のパーキングエリアにも出店、和食の「そば・うどん」も含めた業態で展開するなど、新たな方向性も模索中である。

◆取材者の視点

ラーメン店など、単品型の飲食店では、「味の戦略」が何よりも増して重要になっている。

秀穂の草野社長の言う「一〇人のうち、三人が熱心なファンになってもらう味」という戦略は明解であり、とん太のラーメンの個性的な味を良く説明している。

秀穂のとん太が、先行する大手チェーンも多いラーメン店業界にあって、比較的短期間に規模を拡大できた理由のひとつは、この味の戦略が明確であったためであろう。

その味をFC店で確実に再現するために、さまざまな省力機器を開発して作業を標準化し、繁閑の差によるオペレーションの乱れや味のバラつきといったものをなくそうという方針の標準店舗が、この幕張店であるといえる。

省力化機器の導入によって、人件費率が五ポイントも変動するというのは驚異的だが、言い換えればラーメン店とはそれだけ労働集約的であるということであろう。

そもそも、ラーメン店のイロハも分からぬ初心者を、いっぱしの経営者へと指導するのは並大抵のことではない。しかし、フランチャイズ本部とは、それを可能にしなければならない使命があるのだ。

たとえば、一部のコンビニなどでは、そのためのSV(スーパーバイザー)育成に多大なる投資を行っている。

わが国の多くの独立起業者向けフランチャイズチェーンに見られる大きな弱点のひとつは、教育システムが脆弱であるという点にある。短期的なトレーニング(訓練)と、長期的な教育とは区別して考えなければならない。

そのことが、とん太に限らず、多くのラーメン店チェーンにとって、今後の大きな課題のひとつではないだろうか。

◆ラーメン「とん太」幕張店(経営=秀穂)/開業=一九九八年9月1日/店舗面積=建築面積二七坪/客席数=六三席

◆筆者紹介◆ 商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけた後、SCの企画業務などを経て、商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援など幅広く手がける。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: ラーメン店