で・き・る現場監督:せんざん本店・椿潤港北ニュータウン店店長

1999.03.15 174号 4面

人一倍の努力家、腕がたち、頭の回転が速い。そんな人物に共通するのが「人にも厳しい」点だろう。歳が若ければなおさらで、現在、月商二五〇〇万円を売上げる港北ニュータウン店店長の椿さんも例外ではなかったようだ。

高校時代から飲食店でバイトを重ね、「将来は自分の店を」と明確なプランを抱く椿さん。大学卒業後居酒屋の厨房で働き、四年半前に(株)せんざん入社。抜群の接客力で「当初から有能な幹部候補生として注目」(同社開発・管理部藁科謙二郎部長)されていた。

実際、早くに支店のホール長となったが、懸命に仕事に取り組むにもかかわらず「社長や上司に怒られる」不本意な日々が始まる。

「社長には『器を大きくしろ』、周りからは『いい人になれ』と言われましたが、そう言われても実際どうすればいいのかわからなかったですね」と椿さんは振り返って笑う。

「めったに怒らない社長にしかられるぐらいですからよっぽど問題があったんですよね」

本店に移り、「ベテランのパートさんたちにもまれた」(椿さん)後、二年半前、港北ニュータウン店オープンで店長に。ところが立ち上げの忙しさでついカッとすることも多く、「店長にはついていけない」と言い出すパートさんが続出する。

「これはさすがにショックでした。そして、働く仲間に信用されなければ店をやっていけないことを身をもって実感しました」

それからは「ひとりで頑張るのではなく、皆で楽しく働ける職場に」と発想を転換、第一歩として皆と対話(相手の返事が返ってくる会話)すること、できるだけ相手の長所を見つけてそれを口にすることを心がけた。

また、「働きやすくするために何でも言って」と伝え、掃除機が使いにくいと言われれば翌日には新品を、ロッカーには鏡、更衣室に時計などなど、経費を惜しまず迅速に応えていった。こうした働きかけで半年ほどでムードが変わり、店の活気にもつながった。

「対話」を大事にするのは接客においても同様だ。

「『こんな酒が飲みたい』と言われれば取り寄せ、『かにみそが好物』ならいい品が入ったときに一本電話を入れる。客にわがままを言ってもらい、スタッフ一同で機敏に対応、がモットーなんです」(椿さん)

対話でお客の要望を引き出し、心配り、ぬくもりとともに応えていく。競合店が多くなるほどこうしたプラスアルファが勝負のしどころとなる。

「器が大きくなったかどうか未だ不明」と椿さんは謙そんするが、いまやトップ店長として、店長候補生をトレーニングする立場でもある。そのときには必ず「技術は伝えられるが人のやり方をまねすることはできない。自分の持ち味、長所をうんと磨いて短所をカバーしろ」と話すという。

◆つばき・じゅん=昭和44年神奈川県生まれ。海鮮が売りのせんざん本店グループでは魚介は市場から直取り。椿さんも「目利き」として車に乗り込むことも。実は趣味も「熱帯魚観賞」という魚好き。休日は三歳と一歳のお嬢さんたちのお相手をつとめるよきパパでもある。

◆(株)せんざん/代表取締役社長=山泉篤/創業=一九八八年/所在地=神奈川県横浜市港南区港南台三‐二二‐三、Tel045・834・1011/一九七八年にすし店としてスタート。現在店舗数七、今春さらに二店を出店予定。正社員四五人。年商一八億円。

◆せんざん本店港北ニュータウン店(横浜市都築区茅ヶ崎南二‐一一‐一五、Tel045・942・3335)営業時間=午前11時30分~午後10時30分/坪数・席数=一〇三坪・一二〇席/従業員=正社員一一人、パート・アルバイト二十数人/一日来店客数=平日二二〇人、土・日三四〇人/平均客単価=昼一五〇〇円、夜四〇〇〇円/地元客中心でファミリー七割、会社員三割

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