まかない味シュラン:フランス料理「レストランW」
正統派フレンチを展開する「レストランW」。厨房を率いるのは、第三世代料理人として活躍する市川知志シェフ。次から次と華やかなフランス料理を繰り出すが、厨房でのまかない食は気になるところ。あくまでも基本料理の実習の場とするのがまかない食。合わせて仕入れ、食材、数値などの管理技術を学ばせようとの配慮から、経費はすべてスタッフから徴収したもの。新人にとり毎日、一喜一憂の場となる厨房を訪ねてみる。
「ジャガ芋料理はフランス料理の基本中の基本」と言う市川知志シェフ。当然に料理実習の場であるまかない食には、ジャガ芋料理がたびたび登場する。
フランスにおけるジャガ芋は、日本のコメと同じ位置づけにある。それだけに特質をしっかりつかみ、いろいろなメニューに応用させようという思いがあるからだ。
まかない食は午前11時と午後5時からそれぞれ三〇分。短時間で要領よく仕上げなければならない。作り手は厨房スタッフの新人が二人一組、一日交代で当たる。
気になる経費は店の伝票とは切り離され、別会計。一六人のスタッフは一日二回、一食一八〇円の月額分をまかない費として納め、担当者はこの中から日割りでやりくり算段する。
「仕入れは別。こうすることで業者とは個別に発注、値段の交渉、メニュー管理、数値管理など、実際に店を切り盛りする感覚がつかめます」
担当者は、廃物利用など知恵を絞った創意工夫メニューを一週間前に提出しなければならない。毎日の食事は体をつくる源、新人の実習の場ではあるが、バランス良いメニューかどうか先輩がチェックする。
メニューはフランス料理中心かと想像したが、意外に納豆、味噌汁的家庭料理が基本。「捨てるものをどう生かすか、何を組み合わせるかなどの応用力をつけるにはこれが一番。ただどうしてもパターン化しやすく、ひどい時は曜日まで分かってしまうこともある」と苦笑する市川シェフ。
メリハリづけに徹底したフランス料理デーを一ヵ月に一回設ける。といっても「あくまでも煮込みなどオーソドックスなものを修得させる」ためのもの。
フランスで修業中、トロワグロをして「大好物のポンムリヨネーズは市川シェフの作ったものが一番」と言わせたほど。日本でいう味噌汁的なものをフランス人からおいしいと言われ、感無量だったという。
「新人は失敗を恐れず、おいしいと言われることに燃えて欲しい」と一言アドバイス。
○アッシェパルマンチェ
■作り方 コンソメを取った後、普段は捨てるひき肉にマッシュポテトをのせ、さらにチーズをかけて焼き上げる。
■ワンポイント フランスの最もオーソドックスな家庭料理。ジャガ芋を主にした飽きないメニュー。
○野菜のポタージュ
■作り方 玉ネギ、カブ、大根、キャベツなどの野菜にベーコンを入れて煮込み、ミキシングしてこし、塩、コショウで味を調整。野菜のうま味を生かしたポタージュ風スープ。
■ワンポイント 古いパンでボリュームアップ。
○プディングディプロマート
■作り方 自家製ケーキのたちクズやお客が残したバケットを集め、牛乳、卵を入れて蒸す。
■ワンポイント フランスで修業中、まかない食に出たデザートメニュー。このアイデアをいただき、よく作る人気メニュー。