百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ネギ
ネギの栽培歴は三〇〇〇年以上とみられ、中国ではもっとも古い野菜の一つである。日本には仏教伝来とともに伝えられた。日本書紀や万葉集にも名前がみられ古来から食用として珍重されてきた。
耐寒性・耐暑性ともに強く、東洋では熱帯から寒帯に至るまで広い範囲で栽培されている。中国では漢方薬材の一つである。
日本では春まきと秋まきの二種があり、年間で回っているが、甘味があって味の良いのは秋から冬にかけてのもの。品種も大別すると葉ネギと根深ネギに分けられ、前者は耐寒性が強く冬でも良く成長する。関西地方でも多く栽培され、九条ネギ群が代表的。根深は株分かれがなく葉鞘部が伸び、この部分に土を寄せ軟白部として育て上げる。千住ネギ群がこの代表となる。
ネギには特有のツンとくる刺激成分があり、これを硫化アリルと呼んでいる。ネギの中では配糖体の形で存在し、酵素によって分解されてできる。これは一種の刺激性芳香である。この作用で胃液の分泌を促し、消化の働きを良くする。この硫化物には殺菌力もあり、火傷に良いとされている。さらに動物性食品の異臭を消す作用があり、広く料理に応用されている。ネギを煮ると甘味が出るのは含硫化合物が変化し、甘味物質が表面化するため。成分的にみるとカロチン(ビタミンA効力)・Cなどを比較的多く含むが、これらは緑色部に多い。栄養的には根深ネギより葉ネギの方が優れている。
料理法として繊維が柔らかく生食に向く。特に特有の香気があるので薬味として喜ばれている。この場合、水にさらさないで、有効な硫化物を生かすようにするのが大切。また肉や魚の生臭みを消すので、ネギマやすき焼きとは良く合う。またネギを焼くと特有の芳香が出てくるので、素早く調理することも大切。 ネギの香気は酵素アリイナーゼで古くから民間療法や健康食品として活躍。身近な例では、あぶったネギをノドにあてて湿布するなどである。
中国では葱葉・葱の白茎・葱汁(エキス)・葱花・葱・葱根すべて薬剤として中薬大辞典に記載されている。
主要効果をみると
葱葉…風邪予防・発汗・解毒
葱白…解毒・頭痛・悪寒・腹痛葱汁…解毒・駆虫・頭痛・尿血葱…温腎・明目・目眩・痢疾葱須(葱根)…寒頭痛・魚肉毒 などとなる。
利用方法として葱醋粥・葱白粥・葱姜粥・葱糖粥などで用いる。ネギは古くから庶民にとって貴重な食材と薬材であった。