百歳への招待「長寿の源」食材を追う:造血作用もある「クコ」
枸杞(くこ)は人気の高い漢方薬材の一つ。日本では平安時代から貴族の間で愛用されていたという。江戸時代の碩学・貝原益軒は薬効の高く品質の良いのは中国産のみと警告している。
枸杞はおよそ二〇年前、不老長寿の薬だとか万能薬だともてはやされたため、東京周辺のものは絶滅した。それほどの効能がないとしてブームは去ったが、依然としてファンは多い。
枸杞は日本全国どこでも成長する。各地の川辺・土手・海岸などに生え、高さは一~二メートルに育つ落葉低木である。
葉・花・実・茎・根などすべての部分が利用できる珍しい植物である。栽培も容易、耐寒性も強い。このため価格は非常に安い。薬膳料理だからといって枸杞料理が割高になるのは許せない。
枸杞の葉は大きくて柔らかいので、枸杞めしに利用。茹でてやや濃いめに味をつけ炊きあがったご飯の上にのせ、よく蒸らしてから混ぜ合わせる。生のままのものは天プラや炒め物に。
葉と茎を摘んで細かく刻み、乾燥させると枸杞茶の出来上がり。コーヒー色の茶で意外と飲みやすい。国産品の薬効は少ない。
根の皮をはいで乾燥させたものは「地骨皮(ジコッピ)」と呼ばれ、血圧降下・血糖降下・解熱作用に効果がみられ、煎じて飲まれている。日本では中国からの輸入品に頼っている。
漢方薬の国、中国では薬剤の産地についてやかましいものがある。薬効の高いものは、寧夏(ネイカ)産(寧夏回族自治区)のみとしている。このため「寧夏枸杞」と特別の呼び名を持つ。もし東京で枸杞の実が穫れたら、観賞用として楽しみたい。薬剤としての効果は期待しにくい。
中薬大辞典によると、効能として、腎臓・肝臓・肺臓を活性化し、増血作用があり、視力を強くし、腰や膝のだるさをとり、かつ糖尿病にも効果ありとしている。
漢方薬の特性は遅効性で、二度や三度食べたり飲んだりしただけでは、あまり効果はみられない。ある程度の期間利用して初めて効果があがってくるものである。そのために大切なのは飲みやすい、食べやすいこと。
枸杞の特性は味としてやや甘みがあり、クセがなく風味が良い。また彩りも良いため薬膳料理の人気者となっている。料理名として、枸杞肉糸・枸杞酒・枸杞蒸鶏・枸杞粥など。一回の一人前の使用量は目安として一〇~二〇グラム。
枸杞肉糸は豚肉の細切りと枸杞・筍を強火で炒め塩・こしょう・ごま油・紹興酒・しょう油・片栗粉などで調味したもので、抗老・益寿・体力の増強に期待されよう。枸杞粥は日本の薬膳で最も人気の高いメニューの一つ。食べやすく彩りもよい。寧夏産を使用すること。コメと同時に炊き込み粥をつくる。益精気・抗早衰食とみられている。
枸杞の適応性は広く、何にでもよく合い、しかも安価で美味。期待効果は極めて大きく優れた漢方薬と呼ぶことができよう。