滋味真求:「オレ・オラ(東京・八重洲)」本場ブラジル炭焼きシュラスコ

1998.12.10 39号 13面

コーヒー、日系、アマゾン川‐‐ブラジルというとたいていの日本人が思い浮かべる三つの言葉だが、近頃ではボサノバ、シュラスコ、カーニバル‐‐この三つも大分浸透してきたようだ。特にこの数年来、東京ではシュラスコの料理を看板にする店が増えてきたが、本物のシュラスコというのは少ないそうである。ところが東京の真ん中、東京駅前の八重洲に本場ブラジルと同じく炭火で焼く「オレ・オラ」という専門店がある。

シュラスコというのは、本来はシュラスコ・ナ・ブラーザ=炎で焼く焼き肉という意味だそうであるから、赤外線ヒーターやガスオーブンで焼くなどというのは論外で、このオレ・オラのように炭火で焼くのが本場ブラジルスタイルということである。

オーナーの松宮伸三さんは某大手建設会社のブラジル開発事業責任者として現地に赴任、数年前独立しその経験を生かし、生鮮食料品、日用雑貨品などの輸出入事業を幅広く展開している。その事業の一環としてレストラン経営にも進出。わが国に馴染みの薄いブラジル料理ではあるが、この炭火焼きシュラスコは日本人の味覚にも合うのではないかという直感で、数年前この店をオープンさせたとのこと。

松宮さんの話では、もともとシュラスコなどというものは、南米のガウチョ、つまりカウボーイが焚き火などで肉を焼くことから端を発した料理なので、しごく素朴で野趣に富んだものだそうである。なるほど牛肉、豚肉、鶏肉などに岩塩をまぶし、鉄串に刺して炭火にかざして焼くわけであるから、余分な油は落ちて肉汁を残しヘルシーに焼き上がる。また燻製効果もあり炭火ならではの風味が感じられる。これにモーリヨというビネガーを主体として、トマト、タマネギ、ピーマンなどの野菜を刻み混ぜたソースをつけて食べるのであるから、サッパリとした味になり、いくらでも食べられる。

また変わったところではセブ牛のコブ肉を使ったクッピンというメニューがある。コブ肉などと聞くと何か固そうで噛み切れるのかな、というような感もするが、これが意外に柔らかく、フォークや箸でも千切れるくらいである。調理法を伺うと、圧力鍋で四、五〇分間煮て油分を落とし、遠火の強火で焼き上げると、柔らかく風味のある焼き肉になるそうである。

同店ではこの各種シュラスコが食べ放題、お替わり自由、フリードリンク付き。これからの忘年会、新年会の季節は、幹事諸公も飲み代で足を出すこともなく喜ばれることであろう。

ワイン類はいま話題のチリの「コンチヤ・イ・トロ社」の品が豊富に揃っているので、ワイン好きにはたまらない。特にチリのワインは欧州のワインと違い、濃厚な野趣が特徴なので、素朴な炭焼き料理であるシュラスコとは相性が良く、互いの持ち味を引き出している。また砂糖きびから作ったブラジルの地酒であるピンガにレモン、砂糖、氷を加えたカイピリーニャという飲み物は独特の個性があり、コブ肉のクッピンと合わせると後を引く旨さである。

アラカルトには「フェイジョーダ」という豚肉とフェイジョン黒豆を煮込んだ南米独特の珍しい郷土料理がある。この料理は昔、奴隷たちが雇い主から払い下げられる粗末な黒豆に、豚の耳、鼻先、尻尾などという部分を煮込んで作った廃物料理的なシチューであるが、これが意外に旨く、一般に普及したという。わが国の「ねぎま鍋」や「三平汁」そして中国の「合菜代帽」のように、どこの国でも貧しい人々は乏しい食材を利用して庶民の傑作料理を作るものである。

同店ではこの他にカルパッチョ、ミラノカツレツ、パエリア、パスタ、ピッツァなどの南欧料理も揃えているので、レストランウエディングや二次会、各種パーティーにも利用できる。シュラスコ・Aコース(食べ放題、サラダバー、ライス、ソフトドリンク付き)三〇〇〇円。シュラスコ・Bコース(食べ放題、サラダバー、ライス、フリードリンク付き)五〇〇〇円。ランチ(ジュース、コーヒー、マテ茶付き)七五〇円。サラダバーには各種新鮮野菜の他、椰子の芯芽、アンデスの小芋、バナナのフライ、タロ芋のデンブなど珍しい小菜も揃えられているので、食卓の話題に花を添えそうである。各種パーティー、会合などの予算は、シュラスコ料理の店にふさわしい堂々たる体躯の村石悟朗店長に相談すると親切に相談に乗ってくれる。

店内は椅子一〇〇席。

住  所=東京都中央区八重洲2‐4‐13

Tel03‐3275‐0373

営業時間=11時30分~14時、17時~22時

(休日=日、祭日 各種パーティー・貸し切りあり)

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