滋味真求 本場中国・味の店「金鳴園」 おすすめ四川料理の銀糸巻
テレビの料理番組などを見ると、司会者やゲストは絶品! 絶妙! などと言うことがあってもあまり“うまい!”という言葉を聞いたことがない。しかし料理などというものは結局はうまいかまずいかのどちらかであるから、うまい、まずいでは番組が成立しないのであろう。
ところで本当にうまい中国料理を食べさせる店が東池袋にある。間口も狭く、椅子やテーブルはガタピシとして、お世辞にもきれいとはいえぬ店だが、味は東京でも屈指の店であろう。看板は広東料理だが、四川料理、湖南料理、ベトナム料理まで作ってしまう。
店主の陳金鳴さんは、大変波乱に富んだ経歴の持ち主で、ハノイ生まれの華僑二世だが、ベトナム戦争の戦火を逃れ台北へ。そこで各地料理を修業し、その後横浜中華街に招聘されて腕を上げ、一〇年ほど前独立し東池袋に店を開いた。店名の“金鳴園”は、店主の名をつけたそうである。
さて、この店のうまい料理は数々あるが、何よりお薦めは四川料理。もちろん何を食べてもうまいが、四川料理はとくに香港や台北の裏町にある地元のグルメたちで繁盛している食堂の味、まさに本場の味である。四川料理独特の“銀糸巻”という揚げパンがあり、料理のソースをつけて食べるとびっくりするほどうまい。
このほかには、蒜泥白肉(茹で豚のにんにくソース和え)や宮保蝦仁(海老の唐辛子甘辛ソース)をお薦めする。
お客は本場中国の味に引かれた在日中国人が多い。有名な中国料理店の調理人や支配人たちもこの店の料理を食べにくるというのもうなずける話である。現在この店のように、中国人の店主自ら鍋を振るう店は少ないので、貴重な存在なのだ。
店主の陳さんは、北京語はもちろんのこと広東語、台湾語、ベトナム語、日本語、英語が堪能という語学の天才肌のご仁だが、店員もみな日本語が達者なので料理の相談をするとうまい料理にありつける。よく料理の鬼才、鉄人などという強面の料理人を見かけるが、店主は人好きのする気さくなタイプで、料理にもその人柄が反映している。
店主に蒜泥白肉(茹で豚のにんにくソース和え)の作り方を教えていただいたのでご紹介しよう。
お試しのほど………。
店内は椅子三〇席。宴会は四〇〇〇円より。
・材料
豚バラ肉(ブロック)‐‐1本、キュウリ‐‐適宜、トウバンジャン‐‐小さじ1、ゴマ油‐‐少々、すりおろしニンニク‐‐適宜
・甜醤油(タレ)
しょう油、砂糖、老酒、水‐‐各大さじ1、ネギ、ショウガ‐‐少々、陳皮、丁字、八角、タカのツメ‐‐1片、酢‐‐少々
作り方
甜醤油の材料を合わせ、タカのツメは三等分にし弱火でトロトロ煮つめ、シロップ状にする。豚バラ肉は茹でて熱いうちに薄切りにして皿に盛る。キュウリを縦に薄切りにして豚肉の上にのせる。シロップ状になったタレに加減しながらしょう油を加え、トウバンジャン、ゴマ油、酢、すりおろしニンニクを加え、よく混ぜてから豚バラ肉の上からかける。
住所・東京都豊島区東池袋一‐四四‐一〇
Tel〇三‐三五九〇‐三七七四
営業時間・AM11:30~PM10:30(年中年休)