本の中から 赤毛のアンの“イチゴ水”
赤毛のアンにはとにかくお茶会の話題が多い。この“お茶会”という言葉に何となく優雅さを感じて憧れを抱いたものだ。
当然、アンもお手伝いをしては、ケーキの香料に痛み止めの薬を使うような失敗をするが、すべて手作りなのだから考えてみると偉い。
手作りといえば飲み物も同様で、友人のダイアナを招待して“イチゴ水”なるものを飲ませる場面がある。もっともアンは間違えて葡萄酒を渡してしまうのだけれども。それにしても日本人の私たちにとってはイチゴ酒や氷イチゴはともかく、イチゴ水なんて聞いたことがない。
話の中ではどの家もつくっている様子だ。赤ワイン色をした、分かるようで分からない液体。昔からその正体が気にかかって仕方なかった。
調べてみると、当地でキイチゴの飲み物として知られているのは「ラズベリー・ビネガー」。つぶしたキイチゴに酢を加えてガーゼでこし、それに砂糖を煮とかした物で、瓶や壷で保存されるとある。物語中の「イチゴ水」はこれかもしれない。
ノンアルコールなのに、「ラズベリーワイン」と呼ばれることもあるという。家庭ごと地域ごとに呼び名が変わるというのはいかにもだが、これが海を越えた読者を惑わせたり、好奇心をもたせたりする原因かも。(A)