百歳への招待「長寿の源」食材を追う:くるみ

1997.09.10 24号 14面

松の実・くるみなどのナッツ類には次代を託した生命力が秘められている。凝縮した栄養成分がつめられたこれを食べることによって、新たなバイタリティーが湧く。毎日少量の愛用をおすすめする。

(食品評論家 太木光一)

くるみはペルシャ、中国、日本、北米、キューバ、南米、オーストラリアなどを原産地として一五~四四種類あるといわれる。日本には野生のオニクルミとヒトクルミがみられる。

しかし世界的に栽培されているのはペルシャクルミで多数の栽培種の基本となっている。日本の栽培種はテウチクルミとシナノクルミで前者は徳川中期に中国、朝鮮を経て渡来したものである。

くるみを漢字で胡桃と書くが胡国(シルクロードの西方の国)からきた桃の意である。やがて欧州種が導入され、テウチクルミとの自然交雑のうちにシナノクルミが生まれた。

栽培は比較的冷涼で、小雨多照、乾燥の強い地方が好まれ、土質は腐植に富んで保水力があり、排水の良い所が望まれる。この条件に合うなら山裾・丘陵・土堤などどこでも良く、日本では甲信越地方から東北にかけて、河流に沿った山地に散在し、栽植されている。

収量は樹齢によって大差、六年樹で一kg、十年樹で一六kg、二十年樹で五○kg、三十年樹で百kgと急増する。くるみは堅く厚い殻皮でおおわれているため貯蔵性が高く、冷温で乾燥している場所では一年以上経ってもほとんど変質することがない。

日本では本格的な栽培歴は浅く、くるみ生産の先進国はアメリカとフランス。優良品種が多く大規摸な栽培が進められている。

成分的には一○○g当たり六七三Kカロリーとトップクラスのハイカロリー(松の実六三四Kカロリー)。しかもカルシウム、鉄、ビタミンA・B1に恵まれている。

ナッツ類の中では高脂肪・高蛋白で、くるみ油は松の実油と同様にリノール酸を多く含むのでコレステロールを下げる効果がある。蛋白質のアミノ酸組織は良質で消化率も高く高齢者の保健食にも向いている。

くるみ油は果仁から圧搾法でとれる淡黄色の乾性油で極めて良質。オリーブ油などよりも高価である。フランスではユイル・ド・ヌワと呼んで最高級のドレッシングに利用される。

食品としてのくるみは特有の風味と形に雅致があって高級用途を持っている。特にケーキには生地に刻み込んで多量に使われる。ウオルナッツケーキ、ウオルナッツモカケーキほか。

フランスではワインを蒸溜したオー・ド・ヴィ(生命の水)ブランデーにくるみを漬け込み、薬酒として修道院で愛用している。

中国ではくるみを貴重な漢方薬剤としている。くるみ、くるみの葉、くるみの花、くるみの根。くるみ油すべてが独自の薬効を持つ。

くるみの葉…肌あれ、疥癬

くるみの花…イボとり

くるみの根…便秘

くるみ油…耳痛 など。

くるみ自身はビタミン、ミネラル豊富で健康食としているが、健脳食、美肌食ともみている。特に不眠症や足腰の弱い人によいとする。核桃露(ポータオロー)はくるみをすって、しる粉状にして飲む。おいしく身体も温まり元気のわき出る養老飲料と呼べよう。

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