百歳への招待「長寿の源」食材を追う:きくらげ

1996.08.10 11号 14面

今、きのこはブーム。自然食品で美味、しかもノーエネルギー。食物繊維を多く含み、ビタミンやミネラルにも恵まれていることから、ヘルシーフードの代表格という位置付けにある。そのきのこの中から、代表的な2点を紹介する。

(食品評論家・太木光一)

きくらげは中国では木耳、ヨーロッパではユダの耳とその外観の形状で呼ばれているが、生え方は耳状ばかりでなく花弁状、皿状などとさまざま。互いに固まりあって生える。

中国では減肥食、活血、止血、明目、益精(精力が強くなる)、高カルシウム食として好んで食べられている。日本でも繊維分が多くファイバーフードとして注目を浴びている。

きくらげ発生は夏から秋にかけて、桑、楡、えんじゅ、柳、にわとこ、ざくろなど広葉樹の枯れ木や倒木の樹幹などに群生。木の種類によって品質面では大差がある。世界の温帯地方に広く分布している。径は数センチメートルで、生の時は暗褐色をして寒天性肉質であるが、乾燥すると収縮し軟骨質で黒色に変わる。上面には微細毛が密生し、下面は平滑で担子細胞をつけている。近縁種は多いが、いずれも食用となる。

最近では人工栽培が成功し、安く入手できるようになった。また中国から輸入されており、品質面ではこの中国産が優れている。

きくらげの成分は水分一三・七%と他の乾物と比べて非常に少なく保存性が極めて高い。たんぱく質もきのこの中では椎茸と並んで王様級。また繊維が多く注目されている。この繊維は便秘を治し、大腸癌を防ぐ健康食品である。肉食(繊維ゼロ)の多い人はきくらげとの併用が効果的である。カルシウムは一〇〇g当たり一八〇ミリグラムと多く、牛乳は一〇〇ミリグラム、きな粉は一九〇ミリグラムであるから牛乳のほぼ二倍。きな粉とほぼ同じ含有量で、優れた食品と呼べよう。

きくらげには黒色と白色のものがある。白きくらげは銀耳、雪耳と呼ばれ霞たなびく四川省の山深い所の産出が最高品。乾燥品は薄茶がかっているが、ぬるま湯で戻すと白い花が咲いたように美しい。最近人工栽培に成功した。白きくらげは黒きくらげよりも柔らかく、消化も良い。老化した皮膚のしわをとり、肌を養う効果が高い。昔は金と等価の貴重品であった。デザートやスープに利用され、高級スタミナ食として、漢方薬店でも販売される。黒きくらげは、香りや味はないが、くらげのような歯ざわりがするとして喜ばれている。価格も安く徳用品で、利用範囲は広い。乾物を戻す時はぬるま湯に漬けてしばらくおく。急ぐ時は熱湯をかけるが、もどったらすぐ冷水にとることを忘れないように。吸水すると五倍ぐらいに増える。

中国料理では炒め物、鍋物、スープ、五目飯などに欠かせない。和風では酢の物、和え物、ひたし物などに利用。また刻んで擬製豆腐、飛竜頭、白和えなど精進料理に使われる。とくに豆腐との取り合せは良く、色彩的にも美しい。歯応えの点からも効果的である。

桑に生えた桑耳は婦人病の良薬。えんじゅにつく槐茸は痔病に。ざくろにつく柘耳は結核や潰瘍に良く、活血、止血の妙薬とされている。便秘防止、減肥、カルシウム食として長寿健康に向かって利用したい食品といえよう。

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